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煌びやかなシャンデリアに照らされる会社のロビーに少し遠くから鳴り響く足音。その音を聞いて社長が緊張したような顔を浮かべた。社長は秘書の私に「今日の客には失礼の一切がないように」と再三指示を入れる。しつこい男だな、と内心では多少イライラしつつ丁寧に返事をする。
コツコツと響く革靴の足音が近付く。
足音の主のお客様にヘラヘラと都合よく愛想笑いを振りまく社長の後ろについて頭を下げたまま、彼らを迎える。
「 ようこそ、灰谷様 」
社長との取引に何回か来ている人。普段の取引は彼と付き人の黒服数人のはずだが、今日は違った。その後ろを気だるそうによそ見をしながら歩いてくる、見るからに怪しい長身の男。
西洋人形のような端正な顔立ち、長いまつ毛に口元の両端の傷。見覚えのある顔に、思わず言葉が詰まる。
昔よりも長くなった髪は奇抜なピンク色に染めており、昔よりもずっと背が伸びている。今日の明け方の夢に出てきた、まだ幼かった彼と今目の前にいる彼の顔が少しだけ重なった気がした。
「 あ〜、コイツは三途。今日の商談はコイツも同行させる。良いか？ 」
「 か、かしこまりました。どうぞ、お連れ様もこちらへ 」
昔は好きだったのに今は顔すら見れない。
冷や汗が背中を伝うのを感じながら、声が震えないように必死に取り繕う。
あれから何年も会っていない私に、きっと彼は気付くわけが無い。それどこか、存在自体忘れているだろう。
私の務めている会社は、法に触れるか触れないかのギリギリの…否、既にいくつも触れているであろう、金に目がないクソみたいな社長が運営する裏社会の会社。
だからこそ、ここに来る人間は大体が裏の仕事の人。
理由なんて何も無いけれど、彼がそういう仕事に就いたこと、私がこんなところにいることも、知りたくなかったし知られたくなかった。
こんなところで会いたくなかった。
わざと私の目の前からいなくなったなら、ちゃんと最期まで私の前に現れないでよ。
三途は社長を一瞥すると、またつまらなそうに内装を眺めてふらふらとつまらなそうに歩いていた。
三途と目を合わせないように、彼に顔を見られないように、俯きながら灰谷に返事をし、VIPルームに案内しようと歩き出す。
1歩目を踏み出そうとした瞬間、後ろからぐっと強い力で手首を掴まれた。驚いて上手く息が吸えなくて、ヒュッと喉が鳴った。
振り向くのが怖かった。
腕を掴んだのは絶対に彼だと何となく分かってしまったから。
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Alice(プロフ) - きなこだいふくさん» 最後までお付き合いいただきありがとうございました…！そんな風に言っていただけて嬉しい限りです…！続編を作るかもしれないので、もし作った際はぜひよろしくお願い致します♡ (2022年4月2日 17時) (
レス) id: fa28fe383f (このIDを非表示/違反報告)
きなこだいふく(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても面白い話がたくさんあり、私自身とても楽しく読み進めることができました。こんな神作をありがとうございます！そして、更新お疲れ様でした！ (2022年4月2日 11時) (レス) @page46 id: 90c5be706c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Alice | 作成日時：2021年9月19日 20時
