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彼がヘラヘラした笑顔ではなく、真面目な顔で見つめてくるのは初めてで、動揺していたのが打って変わって、緊張のドキドキに変わる。


「ばはっ!♡ 気が変わった!」


久々に暴れたからハイになってンなァ、と小声で独り言をボヤいてから、彼はそう言った。


「半間修二」
「えっ、」


半間はにっこりと笑って、キスしたときのように頬を包み込んだまま、大切なものを見つめるときのような、愛おしそうな視線をAに向けた。


「俺の名前」

「なんで、」


キスも名前を教えてくれたことにも、頭がついて行かない。
上手く言葉が出なくて、口をパクパクと動かすと、それを見て半間はまた笑った。


「オマエのこと、縛りつけておきてぇんだよ」



「もう会いたくなかったんだけどなァ?確実にAチャンに良くねぇし」

「だから、あのとき……」

「そー。引き留めた手を取ったら、もう離れられないと思ったンだわ」


縛りつけておく?にどう関係してるのかが分からない話に、少し困惑するも、彼はまぁ聞けって、と私の頬から手を離し、俯いたせいで目にかかってしまった前髪を優しい手つきで左に流す。
こんなに身長が高くて怖そうな人が、あまりにも優しい手つきで私に触れることにギャップを感じてしまう。


「なのになァ。……オマエがあんな顔するから」

「……気になる人の目の前で気丈に振る舞えるほど器用じゃないんですよ」

「あは♡ あんなにオレのこと引き留めたくせに。まだ好きになってくンねぇの?」


片方の長い腕が私の背中に回り、もう片方の腕は私の腰をぎゅっと引き寄せる。私の耳元に顔を近付けて、そっと呟く。


「まだまだ夜は明けないんだろ?」


私のこの前の言葉を覚えていたらしい。夜が明けるまであと何時間あるのだろうか。
自分はタバコ1本分だからこれ以上はダメだと言ったくせに。ずるい。ぎゅっと彼の背中に手を回して抱きしめ返すと、彼は更に強く抱きしめ返してきた。


「タバコ1本分でガマンしてた意味ねぇじゃん」


私が照れながら笑うと、彼は額にまた優しくキスを落とした。近付くと鼻腔をくすぐる甘い香り。

血濡れのスーツを着た男とこんな関係になるなんて、本当にどうかしている。


「言い訳も後からのナシも聞かねぇよ」
「それで良いです」


「ばはっ♡ やっぱ最高だわ。好きだぜ、Aチャン♡」

「私も好きですよ」


なんて返せば、思っていた答えと違っていたのか口元を少し弛めて、初めて彼が照れ隠しに笑った。

■Sanzu Haruchiyo→←■



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Alice(プロフ) - きなこだいふくさん» 最後までお付き合いいただきありがとうございました…!そんな風に言っていただけて嬉しい限りです…!続編を作るかもしれないので、もし作った際はぜひよろしくお願い致します♡ (2022年4月2日 17時) (レス) id: fa28fe383f (このIDを非表示/違反報告)
きなこだいふく(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても面白い話がたくさんあり、私自身とても楽しく読み進めることができました。こんな神作をありがとうございます!そして、更新お疲れ様でした! (2022年4月2日 11時) (レス) @page46 id: 90c5be706c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Alice | 作成日時:2021年9月19日 20時

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