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私と同年代くらいに見えるが、明らかに私とは生きている世界が違う。妖艶でどこか目を離せない雰囲気。
私がびっくりし過ぎて、思わず固まっていると、彼は身を乗り出して声をかけてくる。身長が高いせいか、私よりも簡単に身を乗り出している。
「お兄さん!?落ちるから!見てるこっちが怖い!」
「あ〜?ダリィなぁ」
私が思わず止めに入ると、彼は面倒くさそうに一瞥してから当たり前のように彼の部屋のベランダの柵に足をかけ、隣との仕切りを越えて、私の部屋のベランダの柵に足をかけた。
軽く私の部屋のベランダまで身軽に乗り移って来た彼に思わず言葉が出なかった。
私の方に向き直ると、無邪気な笑顔を浮かべて私に笑いかける。自由奔放が過ぎるのでないだろうか?
「何その顔」
「…まさかこっちに来るとは思わなくて」
「オネーサンから覗いてきたクセに」
彼は困惑する私の顎を軽く掴んで目を細めた。
綺麗な顔立ちに、お風呂上がりなのか前に下ろされた黄色メッシュの黒髪。間近で見ると、改めて彼の身長の高さに驚かされる。
明らかに一般人ではない風貌と視線に、思わず息を飲み、ドクンと大きく跳ねる心臓を抑える。
「ここってオネーサンじゃなかったよな?」
「…あぁ……両親の代わりに少し前からここに住んでます」
そういえば、ここに最初に引っ越してきたときに近くに一応挨拶に行ったが、隣はいつも留守だな、と思っていた。
その隣、この人か。
「丁度ヒマしてたんだ」
「は、」
「オネーサン付き合ってよ」
有無も言わせず、彼は私の手を取った。
彼の大きな手を不思議と手を振り払えず、握り返すことこそしないものの、それを拒否はできなかった。
彼は私の口に自身のポケットからタバコを取り出して、私の口に咥えさせる。そして、自分のタバコに火をつけてから、私の顔に近づけた。
彼の吐息が顔にかかり、男物の香水のような香りと私の普段は吸わないタバコの香りを強く感じる。
キスでもされるのかと思い、反射的にぎゅっと目をつぶった。
「ばはっ♡ ンな可愛い顔すんなって。お隣サン」
「えっ」
彼はキスした訳ではなく、私のタバコに彼の咥えたタバコから火をつけただけだった。
キスだと思って固まってしまった自分が恥ずかしすぎる。
「まぁ、これシガーキスっていうんだけどな」
顔を赤らめて目を逸らすAを見て、名前も知らない彼はまた一層目を細めて口元を緩めた。
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Alice(プロフ) - きなこだいふくさん» 最後までお付き合いいただきありがとうございました…!そんな風に言っていただけて嬉しい限りです…!続編を作るかもしれないので、もし作った際はぜひよろしくお願い致します♡ (2022年4月2日 17時) (レス) id: fa28fe383f (このIDを非表示/違反報告)
きなこだいふく(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても面白い話がたくさんあり、私自身とても楽しく読み進めることができました。こんな神作をありがとうございます!そして、更新お疲れ様でした! (2022年4月2日 11時) (レス) @page46 id: 90c5be706c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Alice | 作成日時:2021年9月19日 20時