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手をぎゅっと繋いだまま、彼は一向に離す気配がない。
「最初に店に来たときから、綺麗だって思った。見た目だけじゃなくて、オレみたいなやつにもにこにこ笑ってくれるところとか、優しいところとか」
彼の熱の篭もる視線に目を逸らせない。
ザザァーと音を立てながら海は波が寄せては引いてをゆっくりとずっと繰り返している。
「オレの顔のこれ見て怖がるよりも先に、心配してくれたのも嬉しかった」
そう言いながら彼は空いている手で左目のあたりの火傷の痕を指先でなぞった。そんな仕草でさえも色っぽく見えて、私の頬が赤くなっていることが自分でもわかる。
「オレのことをAがそういう意味で好きじゃないのは分かってる。でも、オレのことそういう目で見てくれねぇ?」
さっきの私が弱い顔じゃなくて、それとは反対の男の顔。そういうときだけちゃんと素の顔を出してくるのすらもずるい。
そんな見せられてドキドキしない人いないじゃん。
彼は私の手を離して、私のことをぎゅっと抱きしめる。強いのに壊れ物を扱うかのように丁寧に優しく。
私がそっと軽く抱きしめ返すと、嬉しそうに更にぎゅっと強く抱きしめてくれた。
バイクに乗っていたときのように体温が伝わるのは同じなのに、正面からだと彼の心臓の音も伝わる。私と同じくらい彼の心臓がドキドキしていたことに、私だけじゃないんだ、と安心する。
「顔に出ないね、青宗さんは」
「うるせぇ」
私が言うと、バレたのが恥ずかしかったようで頬を染めた彼は私の肩口に顔を埋めて、顔を隠した。
まだ私は彼のことを恋愛的に好きじゃないはずなのに、なんだかこの瞬間がずっと続けばいいのにと思ってしまうくらいに幸せに思えた。
「友達からでいいし、ゆっくりでいい」
「うん」
「オレを好きになってもらえるようにがんばるから」
"それまで待ってて欲しい"、なんてさっきの表情とは打って変わって、照れながら言う青宗さん。
必死に照れないようにかっこつけてる彼も好きだけど、素直で真っ直ぐで、ちょっと不器用な彼が何よりも愛おしく思えた。
「ずっと待ってるから、いつか迎えに来てね、青宗」
青宗と呼んだことに驚いたのか、目をぱっちりと見開いてから、彼は甘く幸せそうな笑顔で頷いた。
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その後、また"青宗さん"呼びしかしてくれないAが、店に来る度に"青宗"と呼び捨てで呼んでほしくて、彼が必死にアピールするのはまた後日のお話。
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Alice(プロフ) - きなこだいふくさん» 最後までお付き合いいただきありがとうございました…!そんな風に言っていただけて嬉しい限りです…!続編を作るかもしれないので、もし作った際はぜひよろしくお願い致します♡ (2022年4月2日 17時) (レス) id: fa28fe383f (このIDを非表示/違反報告)
きなこだいふく(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても面白い話がたくさんあり、私自身とても楽しく読み進めることができました。こんな神作をありがとうございます!そして、更新お疲れ様でした! (2022年4月2日 11時) (レス) @page46 id: 90c5be706c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Alice | 作成日時:2021年9月19日 20時