082 前世の桜達ー2ー ページ13
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「…本当に、大丈夫でしょうか……?」
「大丈夫だよ桜、ほら、怖がらないで。
今僕達は普通の城下の者なんだ。そう自分に言い聞かせればいい」
そうですよね、楽しまないと、と桜は穏やかな笑みを浮かべた。
城下町は大変賑わっていて、いつも商人に城に出向いてもらって選んでいた着物や
―――桜にとって、全てが未知で素晴らしく思えた。
こんなにも輝かしい民の笑顔を、自分の足で歩いて見た事は無かったのだから、とても新鮮で新しい発見で溢れている。
「桜、こっちこっち」
「なんですか?翼様」
「う〜ん…、やっぱり翼様呼びはやめようか。万が一僕達の正体がバレてしまったら大変だからね。
…それに、桜には特別な呼び方をしてほしい、な…っ」
「っ…た、翼……?」
頬を赤らめながらに翼は、こう言う時くらい呼び捨てにしてほしいと頼むと、オドオドあどけない面持ちで桜は翼を呼び捨てにした。
そんな桜の優しさに、改めて自分は桜が好きなんだと気付かされた翼は、この幸せが長く続いてほしいと願った。
「あ、ありがとう…。あ、それより桜、この簪、キミに似合いそうじゃない?」
「桜…、翼、これって」
「キミの名前が“桜”だからね。ピッタリじゃないかい?」
その口説き文句は今まで出会った王子達にも言われた事がある当たり前に気付きそうな言葉だったが、それを言ってくれたのが愛しい恋人だと思うと別の感情が込み上げてくる。
今まで言い寄ってくる男性はただ、つまらない人間だとしか思っていなかったのに、翼に言われるととても嬉しい。
そして桜は、翼にその桜色の簪を贈られたのであった。
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まお(プロフ) - なんか、ミステリーな感じもあってよかったなと思っています! (2016年5月10日 21時) (レス) id: c7b1f0d78b (このIDを非表示/違反報告)
みきちゃん - 私が桜姫で、タスクくんが翼王子 (2016年3月12日 16時) (レス) id: 565f860085 (このIDを非表示/違反報告)
みきちゃん - 薊ってもしかしてアヤちゃん!! (2016年3月12日 16時) (レス) id: 565f860085 (このIDを非表示/違反報告)
みきちゃん - 恭也?誰の事かな? (2016年3月12日 15時) (レス) id: 565f860085 (このIDを非表示/違反報告)
みきちゃん - 刹那ってもしかしてあの人かな? (2016年3月12日 15時) (レス) id: 565f860085 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小泉 海砂 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2015年10月12日 21時