人魚の詩〜1-1〜 ページ3
「…ちゃん！ Aちゃん…！ 起きてよ！ 」
「…誰、あんた」
誰かに耳元で叫ばれて鬱陶しいな、と思って瞼を開いたら、そこにはお化けみたいなのが居た。
シーツを被っただけの、低クオリティのお化けのコスプレみたいなやつだった。
「誰って…。簡単に言えば神様？ 」
「…そんなの簡単に信じると思う？ 」
「思わないね！ (ドヤ)」
その正体は(ふざけた)お化けの様な見かけとはかけ離れた、(自称)神様らしい。
「ねえ、結局ここどこなの？ 」
「…え？ 神様のことスルー？ スルーするの？ 」
「だって、あんた面倒くさいんだもん」
「……僕、Aちゃんのこと嫌い」
つくづく面倒くさい神様だな！ 本当に！
「ところで、本当にここはどこなの？ 私、自分の家で寝落ちたはずなんだけど」
「あー、ここはね…。君が、望んだ結果だよ」
「…はぁ？ 」
思わず、ドスの効いた声が出てしまった。いけない、いけない…。
「つまり、君が望んだ世界を僕が提供しようと思ってここ、いわゆる次元の狭間に連れてきてあげたんだよ！ 」
「次元の狭間、ねぇ。それって、トリップするってこと？ もしや、コナンの世界に？ 」
「さっすが、生粋の風見裕也の女だねぇ。物わかりが良くて、説明が省けて楽だよ」
「そりゃあ、どうも」
でも、と(自称)神様は続ける。
「君、それが本性なのかい？ 超お金持ちのお嬢様だって聞いていたから、もっとお淑やかなのかと思っていたよ」
「……誰にだって表の顔があれば、裏の顔もある。光が存在して、それに対して陰が存在するようにね」
私は物心着いた時から、両親と過ごした時間という物は無いに等しかった。
ずっと仕事で忙しそうな人達で海外を飛び回り、娘である私の元に帰ってくるのは一年に一度あるか無いか。
これを、親子と言えるだろうか。
この関係に、愛という物があると言えるのだろうか。
答えは「No.」だ。
現に私は、その愛を受けずに育って来た。様々な事象が重なり、私は正直いつ死んでもいいと思うほど、どうでもいい人生を送って来た。
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作者名：しほ | 作成日時：2018年12月7日 14時
