You and me...

ﾁｮﾝｱﾝにて ページ28

1年ぶりにﾁｮﾝｱﾝの実家に戻った私。
そういえば父の葬式以来だった。
正月休みくらいはあったはずなのに、この冬は帰らなかったんだよな。


別に母と仲が悪いとかそういうんじゃないんだけど〜
仕事柄まとまった休みがなかなか取れなかったから、とんぼ帰りになるのはいつも明らかで。
そう思うと・・・どうしても帰省は腰が重くなるのだった。


でも今回は帰省じゃない。
日本での仕事も区切りをつけて、慣れ親しんだ友人や土地ともお別れして。
私は、韓国に帰ってきたんだ。


なのに。


「あら、A。今日帰ってくるなんて知らなかったわ」

「あのね・・・」


いや、確かにね。何日に帰るかとか私も連絡してなかったけど。
1年ぶりに娘が実家に顔を出したっていうのに・・・母のこの反応。


「お母さんが無理やりこっちに帰って来いって言ったんじゃん！
ｼﾞｮﾝｳﾝちのおばさんのが歓迎してくれたし！」


思わず家の玄関で、金切り声をあげてしまった。


「あら、ｼﾞｮﾝｳﾝの家に行ったの？」

「昨夜こっちに着いたの遅くてさ・・・。
一人でご飯食べてたところに、あそこの兄弟が偶然拾ってくれたの・・・」

「アンタ。帰ってきて早々、人様に迷惑かけるんじゃないわよ？」


もう・・・だから誰のおかげでこうやって帰ってくることになったと思ってるのよ。
そんなこと言ってもこの母には全く響かないだろうから、
私はその代わりため息を吐きながらボアブーツを脱いだ。


＊


母はちょうど庭の手入れをしていたようで。
家の中の窓が全開で、家の中は吹きっさらしになっていた。


「寒いけど、換気はきちんとしないとね＾＾」


母はそう言って笑っていた。
父も私も、昔から呼吸器系が弱いから。
ほこりとか塵でよく咳をすることが多いせいで、母はこうやってまめに家の中の窓を開けていた気がする。


もう私の喘息はそこまでひどくないし、お父さんもいないのだから―
そんなことしなくてもいいのにって思ったけど。
今までどおり・・・そうせずにはいられないのかなって。
すがすがしそうに笑う母に敢えて言うことじゃないと思って、黙っていた。


「そうだA。お父さんにもちゃんと挨拶しなさいよ＾＾」

「はーい」


少し心配してたけど―
母は思ってより元気そうだ。

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