You and me...

ルーツ ページ3

「だめだめ、こんなことで乱されちゃ」


私は床から起き上がってぶんぶんと首を振った。
部屋の隅に立てかけてある、ヨガマットを敷く。


「・・・」


私はヨガマットに腰をおろして、ふぅーーっと深く呼吸する。
片足だけ組んだあぐら―半蓮華座という座り方。
下半身をしっかり床に落ち着けて、上半身は胸を開くように伸ばす。


心が乱れそうになったときは―
とりあえずヨガ。
私は目をつぶって、鼻で呼吸を繰り返した。


＊


私は、日系韓国人だ。


両親は日本人だから私の血も日本人。


だけど、私が生まれる前から両親は韓国で生活していて国籍はあっち。
生まれた私も当然、韓国国籍。


生まれも育ちも韓国なわけだけど―
現在東京で暮らしているのは、やっぱり血・・・なのかな。


ハタチのときに勢いでこっちに来て―
こっちの大学で日本語を学んだ。


私のルーツでもあるこの国は。
とっても穏やかで、人間も優しい気質の人たちばかりだった。
独自の文化も素晴らしいものがいっぱいで。


気付いたら、7年。
もうすっかりライフスタイルはこの国に根付いていた。
もちろん日本語もネイティブレベルで会話できる。


でも、つい去年。
韓国で父が亡くなった。肺炎だった。


もともと結核を患っていて、病気とも長い付き合いだった父。
ﾁｮﾝｱﾝにたまに帰省すると、年々痩せ細っていってるように見えて―
こう言ってはなんだけど。
いつか、このときが来るんだろうなって、数年前から心積もりをしていた気がする。


父の症状が急変したとき、ﾁｮﾝｱﾝに駆けつけて。
悲しくはあったけど父の最期を看取ることができて。
私の中では、父の死はもう乗り越えられたものになっていた。


まぁでも母は・・・まだそうもいかないみたい。
長いこと父の闘病を支えてきた人だから無理もないけど。


今はたった独りで韓国に暮らす母。
だから、私に帰って来いって言うのもわからない話ではなかった。


確かにここらが戻り時―なのかもしれない。


ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ！


乱れた心が落ち着きを取り戻し始めたとき。
静寂はまた破られた。

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