You and me...

帰ってきなさい ページ2

「ねぇ、ちょっと冗談でしょ？！」


平和だったはずの日曜の昼下がり。
それは、母からの1本の電話で簡単にぶち壊された。


「韓国に戻って来いって・・・そんな急に無茶言わないでよ！」

『急に？何言ってんの！1年前にお父さんが死んだときからずっと言ってたでしょ？！』

「や。それはそうなんだけども・・・」

『いつまでそうやって日本にいるつもりなの！』


電話越しなのに・・・母の剣幕に思わずたじろいでしまう。
私は電話を耳に当てたまま、部屋の中を所在なさげにうろついた。


「お母さんちょっと待ってよ。だって仕事はどうするのよ？」

『アンタの仕事ならこっちでもできるでしょ。何もﾁｮﾝｱﾝに戻ってこいとは言わないわよ。
でも韓国には帰ってきなさい。住むのはｿｳﾙでもｲﾝﾁｮﾝでもかまわないから！』

「お、お母さん・・・でもね・・・」

『でもじゃないの！いい？アンタと私はたった二人きりの家族なんだからね。
お父さんもいなくなった今、このままアンタを一人日本に居させるわけにはいかないの』

「あの・・・」

『わかったわね？すぐに準備してこっちに帰ってらっしゃい！』

「おーい」


ﾌﾞｯﾂﾝ・・・


「うそでしょ・・・切ったし」


ケータイを耳から離して私はボーゼンとした。
母は一方的に言いたいことだけ言って、電話を切ってしまって。
まぁ国際電話だから・・・無理もないんだけど。
私の意見は完全に無視なわけで。


「あああ、どうしよ〜！ありゃ本気だな・・・」


今更韓国に戻ってこいとか・・・。
無理だよ。無理だってぇ。


日本の―居心地も使い勝手も良い東京で暮らし始めて、早7年。


友達だって韓国よりこっちのが多いくらいだし、
仕事だってようやく楽しいと思ってきた頃だっていうのに。


それでも。
どんなにここ東京が慣れ親しんだ土地でも。


私の故郷は―紛れも無く隣の国、韓国なのだった。


ああ、でも。
やっぱり韓国には帰りたくない・・・。


だって韓国には、アイツがいる。
ｼﾞｮﾝｳﾝが・・・いる。


「やっぱり無理ぃ〜〜」


私は頭を抱えて、床を転げまわった。


あーあーあー。
イヤなこと思い出しそう。


母の厄介な電話のおかげで。
せっかくの休日は穏やかさを失っていた。

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