Tonight, tonight. vol.4 (ページ7)

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パンにまつわるエトセトラ-KH ページ7

行列に並んだけど、メロクロは買えなかった。
ﾋｮﾝたちへの言い訳はただそれだけでいい。
だってこうして食べてしまえば―

「うっ、嬉しい～～。これが憧れのメロンクロワッサン・・・！」

そこで目を輝かせているAさんと。
僕との・・・二人だけの秘密だ。
だからこれは、共犯関係。

それはそうと。

KH「ところで、メロンクロワッサンってこういうのなんですね。
ちょっと僕が想像していたのと違ったな・・・」

僕はまだ口にしていない、巷で話題だというそれを改めて見た。

パリパリとした生地の半月型で～これがまぁいわゆるクロワッサン、か。
その表面に、薄緑色のまだら模様がすじすじに連なっていて。
つまりはメロン風味のクロワッサンってことだったのか？

Aさんは、僕のそんな感想にきょとんとしている。

KH「僕てっきり。メロンパンの延長線というか、進化型なんだと思ってました」

「なるほど。確かにメロンパンでは・・・ないですね」

個人的にはちょっと邪道だな・・・と思ったのは、言わないでおいた。
何においてもベーシックなタイプのが好みというか。
フツーが一番、というか。

KH「僕、メロンパンも～定番が好きなんですよね。外はカリカリ、中はふわふわで」

「あ、わかるかも。表面のビスケット生地は白いんですよね？」

KH「そうです！それでその表面に、ザラザラした砂糖がまぶしてあって・・・」

「グラニュー糖たっぷりのやつ！あ～～わかる、わかります！」

KH「メロンの果肉使用だか知らないですけど、色が緑やオレンジなのはなんか苦手で。
あと中にホイップクリームとかが入ってるのもちょっと・・・」

「やだ～！私もおんなじこと思ってました！」

ここで僕とAさんはハッとした。
お互いのそのメロンパンのこだわりからするに～このメロクロは。
やっぱり邪道・・・ですよね？

僕とAさんは、一瞬押し黙ってメロクロに視線を落とした。
だけどまた二人してそろーっと目が合うと。

「ふふふっ、すみません・・・(笑)」

KH「いえ。食べましょう(笑)」

つい笑いがこぼれながら、僕たちはようやくメロクロを食べ始めたのだった。

「なんだ、実物はこんなもんか」と思いながら食べてみたメロクロは。
バターの香りと、程よい甘さのメロン風味が―思いのほか美味しくって。
いや、違う。

この人とこうしておしゃべりしながら食べているから―
きっとそう思えるに違いなかった。