この街はいつもこんな夢を見てる2-KH ページ1
僕は今―ただならぬ人・人・人に囲まれている。
いや、実際のところ囲まれてはいない。
正しくは、ただならぬ人たちの最後尾に位置している。
ざっと目算してみると〜50人くらい？
その人数を尋常ならざると思うのは、この人の列がとあるパン屋に向かっているからだ。
街中にあるありふれた佇まいの、なんてことないパン屋さんに見えるのに。
お店のオープンが9時半ってことだから。
その5分前にここに到着した僕は。
どうやらここの目玉商品の人気を甘く見ていたようだった。
ヤコブベーカリーの・・・メロンクロワッサン、ですか。
それの何が人々をこうさせるのか、イマイチ謎だけど。
SNSや口コミの影響も大きいらしく、ご覧の通りの盛況ぶりだ。
そういえば、僕のソロコンサートの準備の合間に。
差し入れを持ってきてくれたスタッフの女の子も〜
「ここのパンはほとんど残ってなかった」って、申し訳なさそうにしてたっけ。
そりゃそうだよ・・・。
まだオープン前なのに、この行列なんだ。
僕は腕時計に目を落とした―もうあと1分で9時半。
そうしたら、制服姿の店員さんがお店から出てきて。
誘導のためか、入口のところでプラカードを持って立った。
ふぅ・・・とりあえずこの列が動き始めるんだな。
そう思って安堵したのも束の間。
ちょっと遠いけど〜目を凝らして店員さんの掲げているプラカードを見てみると。
えっ？！「1日限定200個、おひとり様4個まで」だって？！
KH「はぁ・・・何でこんなことに・・・；」
僕は今置かれている現状を呪った。
グループの末っ子であるがゆえに。
ﾋｮﾝたちの使いっぱしりというか〜まさしくおつかい中の僕。
こういうの全然・・・慣れたものではあるんだけど。
それにしても、このパン屋へのおつかいは損な役回りだ。
こうして大行列に並ぶこと自体もそうだし。
それにﾋｮﾝたちご所望のメロクロが、4個までの購入制限ってことは〜
メンバー全員分は買えないということだ。
他のパンを買い足したとしても〜争奪戦になるのは必至。
というか、そもそも僕の順番までメロクロが残ってるのか？
僕より前に並んでいる人たちが全員、上限まで買ったら・・・アヤシイよな。
ああ、もう。
KH「悪いのは・・・誰か」
気分が荒んで・・・なんとなしに。
本日のメインテーマが口をついたころ。
タカタカタカっ！
ちょっとうるさめの足音が遠くから近づいたかと思うと。
その足音は、僕の背中のすぐ後ろで立ち止まった。
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作者名：Mercury zero
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/mercuryzero/
作成日時：2022年2月20日 14時
