Masterpiece-YS ページ10
ブーッ!ブーッ!
ジーンズのポケットの中から振動音。
着信・・・だな。
俺は半ば反射的に、音の出どころであるスマホを取り出した。
この時間に掛かってくるんだ―家族や友人といった身近なところからだろう。
そう思いながら表示を見ると。
ウニョク、か。案の定、身内だった。
アイツはメンバーだから、仕事の話じゃないともいえないが。
「あ、電話?出ていいよ。私もお手洗い行きたかったから」
YS「お・・・そうか」
そう言って、Aはスーツのジャケットを手にして。
店の奥にあるトイレへと足を向けていた。
タイミングとしては・・・よくできている、というか。
こちらとしても有難いと思えるような頃合いに鳴った、俺の電話。
なんつーか昔話に浸りすぎて・・・若干空気がシラけかけていた。
俺は煙草の箱から1本を抜き取りながら。
ウニョクからの電話に応じた。
YS「もしもし」
EH『あっ、イェソンヒョン。今日ってもう仕事終わってる〜?』
YS「ああ、終わってるが・・・どうした?」
EH『今シンドンヒョンやリョウクたちとメシしてるんだけどさ、ヒョンもまだなら来ない?』
カチリ、と。ライターの音を短く響かせる。
シンドンたちも一緒なのか。
そういやウニョクといえば今日は―
YS「んーー。俺も今は外にいるんだ」
EH『あっ、そうなの?!それじゃもう済ませてっか』
YS「お前たち、キュヒョンのコンサート行ったんじゃなかったのか?」
EH『ああ、そうそう!その帰りで俺たちこうしてんの^^
さすがにキュヒョンはいないけどね〜』
YS「そう、か。明日もステージだからな、アイツは。今日はどうだった?」
EH『リハのあたりでは、キュヒョンにしては珍しくガチガチに緊張してたよ。
まっ、でも本番には強いじゃん?!アイツ』
YS「ハハ・・・そうだな」
EH『イェソンヒョンも明日か明後日には観に行くんでしょ。良かったよ、コンサート』
YS「ああ。そうするつもりだ」
煙草の先の灰を、灰皿でしごく。
ここまで話して―電話の相手とは「おやすみ」を交わし。
まだあまり吸っていないのに残りが短くなったフィルターを、口に持っていった。
なんとなしにSNSを開いてみると。
ほんの1時間ほど前に、キュヒョンがファンたちに向けたメッセージのような投稿をしていた。
そこにある画像から。
本番前の緊張など微塵も感じさせないその表情から。
アイツが―今夜を以て、また一段。
歌手としての高みに昇ったのだと、俺は知った。
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作者名:Mercury zero | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/mercuryzero/
作成日時:2019年11月11日 21時