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月と跳ねた地球2 ページ9

「キム・ジョンウンくんのほうが。何っっっ百倍も!歌が上手なのに・・・って。
私そう思って・・・悔しかったなぁ」


私の、今だからこそ白状できる―もはやタネ明かしというよりかは。
少女じみた内緒の話。


そう。今でこそSJの「イェソン」―だけど。
あの頃はジョンウンくんの隠れた実力を誰も知っていなくて。
確かに悔しくはあったの。それは本当。


でもそれでいて。
私だけがそのことを知っているってことに。
密かな優越感のようなものがあったっていうのも―ホントのところで。


だから、当時の私も誰にも言えなかった。
雨の日の特等席のことも。
学園祭でのそんな不満も。


だったら―知りたいとはいえ。
「どうしてどうして」って聞くのは、あんまりフェアじゃないかもしれないね。


話しながら、ふとそう思ったら。


「っ?!」


スッと。
ジョンウンくんの人差し指が・・・私の口の上に立てられて。
ちょっと予想していなかったその動きに、思わず体がギクリとなった。


こ、これは〜。
シッ!ってこと・・・?
もう黙れって・・・?


今度は口を堅く結んで。こわごわ彼の表情を窺うと。
どこか困ったような・・・悲しいけど笑っているような。


うん・・・笑ってはいるんだけど。
怒ってなくて良かったとも思うんだけど。
だけど、なんだかこちらの胸が切なくなってくるような―そんな顔、で。


YS「雨の日だけ・・・屋上で歌ってたのは」

「う、うん」

YS「誰にも歌うところを。見られたくなかったから」

「・・・うん」

YS「誰にも見られたくなかったのは。人前で歌うことをしなかったのは」

「うん・・・」

YS「自分の歌に・・・ずっと自信が持てなかったから」


ここまで言って、ジョンウンくんは。
私の口唇から指を離して。
「クッ」と喉のほうで、自嘲的に笑った。


なんだか赤毛ヘルメット登校事件より。
聞いてはいけないことを聞いて。
言ってはいけないことを言ったような気がしたけど。


YS「知らなかったよ。あの頃の君が。そんな俺の歌を・・・聞いてただなんてさ」

「ごめんね・・・嫌だった?」

YS「なんだろうな。驚きはしたが・・・嫌な気分ではない、な」

「そ、そう・・・。良かった〜><」


彼のこの言葉に、私は安堵の息をついた。


そういや今って〜何時だろう。


これ以上ジョンウンくんといると。
下手なことばかり言って、彼を困らせそうでいけないって思うのに。


なんだかまだ・・・帰りたくないな。

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作者名:Mercury zero | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/mercuryzero/  
作成日時:2019年11月11日 21時

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