Tonight, tonight. vol.3 (ページ4)

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Wobbled.-YS ページ4

なんだか今日という日はやけに。
Aに笑かしてもらっている気がする。

成功を勝ち取った・・・か。
それは、俺が芸能界という世界に身を置いていることを指しているのだろうか。
Aの言うように―そう思われるのも不思議じゃないのかもしれない。

YS「そうだな・・・。確かに今は機会や周囲に恵まれて。
あの頃のような不自由さは無くなったと思う」

「うん・・・」

YS「俺は夢を叶えて。ただ思うまま歌えて。
だけどそれと引き換えに―失ったものもあるような。そんな気に・・・ふととらわれるよ」

「・・・」

YS「それが何かなんてわからないが。なんとなく、な」

仕事は楽しいさ。
歌うことも・・・もちろん。

だが、さっきの話じゃないが。
過去を振り返っては自己嫌悪に陥ることもあれば。
時としてとらえどころのない―不安に駆られることもある。

その点でいえば。
SJの「ｲｪｿﾝ」は―ガキだった頃の「ｷﾑ・ｼﾞｮﾝｳﾝ」から。
未だ成熟できていないままであって。

「・・・私と似てる」

YS「そうなのか？ハハ・・・気が合うのかもしれないな。俺たち」

ここで、ちょうど別席のテーブルを片付けにやって来た店員を呼び止める。
俺がウイスキーの追加を注文すると。
もう客も少なくなった時間帯だからかすぐにそれはやってきた。

「ｼﾞｮﾝｳﾝくん！」

YS「？！んっ・・・んーー」

いつの間にこうなったんだ―？
少女漫画の登場人物のように、ウルッとつやめきをたたえたAの瞳につかまった。
ま、待て・・・まさか泣いてるんじゃ・・・ない、か；

だけど、勢いよく身を乗り出したAの。
シャツの襟からのぞいた―ほんのりと気色ばんだ肌の胸元がふと視界に割り込んできて。
彼女の無自覚な無防備さに・・・俺は不意を突かれてしまった。

おいおい・・・どこ見てるんだﾊﾞｶﾔﾛ。
こっちは少年漫画か(笑)

そんな俺のヨコシマな視線なぞには、まるで気付いてないAは。
すでに泡が立ち消えかけた中身の―ワイングラスを手にして。

「ねっ、もう一度乾杯しよう！もっとｼﾞｮﾝｳﾝくんと美味しいお酒飲んでたい、今夜は！」

男ならば少なからず心浮き立つ・・・魅惑的な言葉。

あーー・・・そういや伝え忘れたかもしれない。
牡蠣も得意じゃないが。
酒も・・・実はそこまで飲めるクチじゃないんだけど、な。

まァいいか。

俺も、君との今夜の酒には。
不思議と―救われているような気がしているんだ。