パトロンの激情 ページ29
今日はゆったりとして暖かそうなセーターに。
下はジーンズという、肩の力が抜けたようなスタイルのアレン先生。
画家という肩書きや、先生のシニカルでやや気難しい性格に対して。
こういうところはいつも若々しいなぁと思う。
売れない芸術家にありがちなイメージの、みすぼらしさみたいなのは見られない。
アレン先生って何歳くらいだったっけね。
私の少しだけ上というか〜うちの社内の課長と同年代くらいかな?という予想。
だから独身の男の人のこのあたりのラインは、おじさんと呼ぶには失礼な気がする。
や、若い子にとってはそうじゃないかもだけれども(笑)
あっ、そういやアレン先生と課長といえば―
「そうだ、君〜!前回の個展の際は困ったよ。そちらが寄こした彼!」
「えっ;」
苦言らしきものを呈しながら、こちらを振り返るアレン先生。
これまでも先生の個展開催のほとんどは、私が担当を任されていたのだけど。
確か前回だけは〜別件のイベントと日程が重なってしまって。
やむをえず担当を課長にお願いしたのだった。
だけど。
「口だけで仕事をしているようで、彼にはうんざりだったよ。
絵画になんてまるで興味ないくせに、見え透いたおべんちゃらばかりなんだ」
うちの課長とこのアレン先生の〜相性がいいわけなんてなかったよねぇ;
どー見たって、合わない二人だって。
ちょっと考えりゃわかることだったのに・・・。
「す、すみません・・・;あれでも私の尊敬する上司なんですけど・・・」
「これからはAさん、君が僕の専属で頼むからね。
そちらの事情もあるだろうが、社長にもよく言っておいてくれ」
「はい、承りました。私でよろしければ、精一杯やらせていただきます」
実は先生と一緒に組むことは、私は全然平気だったりする。
アレン先生は確かに芸術家っぽく気難しい人だけれど。
気持ちいいまでに、こちらを女とか恋愛対象としては見てないってのがわかるから。
先生はこうしてうちの会社や私を何度もリピートしてくれる、お得意様なわけで。
それはあくまでビジネスにおいてのみ。
こちらに信頼を寄せてくれているってことで。
良くも悪くも直情的で、好き嫌いがはっきりしてるアレン先生のこういうところ。
私としては仕事がしやすかったりする。
だけど今日は。
「んっ?そういや君、今日はいつもと雰囲気が違うかい?恋人でもできたかな」
「!!」
ええっ?!
先生にしては珍しく、セクハラ発言?!
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作者名:Mercury zero | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/mercuryzero/
作成日時:2019年11月11日 21時