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インスタント・モーニング3 ページ27

一人で退出した、笑っちゃうくらい豪華だった部屋。
出てすぐのこの景色だってもちろん記憶にあるはずも無く。
なんか本当にもう・・・笑えてきちゃう。


だけどその笑いが顔に浮かんでくる前に。
人の気配を察して、私は思わずギクリと体をこわばらせた。


「・・・っ!」

「・・・?おはようございます^^」


空き部屋の清掃に入っていたらしき、ホテルのルームボーイだった。


だけど私はその爽やかな挨拶を無視するかのように―くるりと踵を返していた。
堂々とした振舞いなんて・・・とてもじゃないけど出来なかった。


さして待つこともなくエレベータに乗れたのは幸運だったけど。
このエレベータも、さっきまでいた部屋のように全面ガラス張りで。
だけど今は夜なんかじゃなく朝だから―ここにも陽の光がさんさんと入り込んでくる。


「はぁ・・・」


ずるずると・・・ガラスの壁に背中をついてしまうと。
笑いの代わりにため息が出た。
なぁにやってるんだろ・・・私。


ジョンウンくんと過ごした昨夜を楽しかった時間と、悪夢のような時間とで。
すっぱりとふたつに切り分けてしまった。
いや、悪夢って言い方は・・・言い過ぎだけど。


エレベータがフロント階に到着すると。
私は足早にフロントやラウンジを突っ切って、この分不相応すぎた場所を立ち去った。
そう・・・ともかく私には分不相応だったんだよ。


このホテルも。
あとは「キム・ジョンウン」くんっていう―男の人も。





ホテルのロータリーですぐにタクシーを拾って。
そこから大した距離ではないのだけど、それに乗って自宅に戻る。
今日の仕事を思うと少し急いでいた。


今日の10時にはアレン先生に会いに行かなければならない。
だけど、今からシャワーを浴びる時間くらいは〜何とかってとこだね。


バスルーム内で先に熱いシャワーをひとしきり流して。
そろそろと思ってシャツを脱ぐと―


「えっ?!」


脱衣所の鏡に映った―自分の体に仰天してしまった。


ホテルにいたときは全く気付かなかったけど。
首元、肩、胸・・・とにかく体のあちこちに。
ポツポツと小さく・・・だけどくっきりと浮かび上がっている赤いあざたち。
こ、これって〜昨夜のジョンウンくんが?!


「〜〜っ!〜〜〜っ!」


鏡の中の私は、真っ赤になりながらジタバタしていた。


まるで記憶に無くとも。
どんなに分不相応だったとしても。
彼としたことの痕跡は―他ならない自分自身に残っていたから。

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作者名:Mercury zero | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/mercuryzero/  
作成日時:2019年11月11日 21時

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