Hello, Friday.-YS ページ14
スムーズに乗れたのは幸いだったが。
やたらと荒っぽい運転のもと・・・市街地を進む。
さっきの思わぬアクシデントの・・・「おかげ」、だとは言わないが。
俺の右腕には―彼女の重みがある。
もっとも、そう促したのは俺なんだが。
体の具合が良くないせいだろうか―
バーでは、こちらに話題をたくさん寄こしてくれていたAの。
その口数がずっと少なく、やけに静かで。
YS「・・・?」
うつむいている彼女のほうを、ふとのぞき込んでみると。
なっ・・・まさか。寝た、のか・・・?
このほんの数分の間でか・・・?!
すっかり目を伏せて。
こちらに身を預けているAの表情は、思ったほど辛そうなものでなく。
どうやら彼女が飲んだという薬が・・・効き始めてきているようだった。
その様子を確認したら。
YS「・・・ハハハ;」
ついつい脱力めいた笑いが上がっちまったよ・・・俺は(笑)
思い出してみれば、昼間のオフィスで。
スケジュールでびっしり埋まっていた―Aのカレンダー。
そこで唯一空白になっていたのが今夜、だったな。
YS「・・・」
身じろぎはしないよう・・・だけど深く息を吐く。
もうほどなくすりゃサムソンに着くってのにな。
何やら厄介なことになっているような気がしないでもない、この状況に。
どこか面白可笑しさみたいなものを感じている自分が―我ながら不思議で。
これも妖精の魔法の仕業かな、なんて。
酔いの醒めかけた頭のどこかで。
わりと冗談じゃなく―そう思っていた。
*
「もう着くよ、サムソン!どこで降ろしゃいいの?!」
YS「・・・!」
運転は人を表す、というか。
運転手のやけに気短かな声に、ハッと我に返る。
なんつーかもうさ・・・怒鳴ってるじゃないか;
だというのに―俺の隣のAは。
まだ目を覚まそうとする気配がない。
もうさすがに・・・起こすべき、だな。
だけど。
YS「A、起きれるか。サムソンに―」
「ん・・・」
着くぞ、と告げるところで。
なぜだろうか―Aの無防備な寝顔を再び目に入れて。
そうする気が・・・一気に削がれていく。
それは決して―彼女をこのまま起こさないでおいてやりたい、だなんて。
紳士のような気遣いではなく。
時刻は、時計の短針と長針がちょうど重なり合う頃―
YS「それじゃこの先の。インターコンチネンタルまで―」
シンデレラの魔女の魔法は12時になったら解けるが。
妖精の魔法は―きっとまだ終わらない。
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作者名:Mercury zero | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/mercuryzero/
作成日時:2019年11月11日 21時