Tonight, tonight. vol.3 (ページ2)

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Golden Age-YS ページ2

酒は無くなってしまったから。
いや・・・さっさと追加を頼めばいいだけの話なんだが。
なんとなく無精して・・・そうせずに煙草のケムをくゆらせる。

普段から慣れ親しんでいる香りに包まれて気分が和らいでくる。
俺がこうして喫煙することに。
Aが寛容で助かった、と思うが―

「あ・・・ごめん。嫌なこと・・・思い出させちゃったみたいだね」

YS「んーー？」

気付けば、俺の斜め横・・・はす向かいに座るAの表情が曇っている。
どうやら俺がさっきの話で気分を害したと思っているようだ。
俺の・・・赤毛ヘルメット登校事件、な(笑)

煙草の火を灰皿で消して。
もう1本を取り出そうと―テーブルに置いた煙草のボックスに手を伸ばした。

YS「んっ・・・その。君のせいじゃない」

「あ・・・そ、そう？」

YS「よくあるんだ。ひょんなことから昔の自分のことを思い出しては。
・・・自分自身が嫌になっちまうときが、さ」

Aの目が、少女のように一度くるりとなって。
次にはもう―仕事相手と話すような生真面目な顔つきになっていた。
そんな彼女に再確認はせず、煙草の先に火を灯す。

本当に・・・よくあることだ。
過去にテメーでしでかしたろくでもないことを思い出しては。
後悔で、その辺をのたうちまわりたくなるような気分になることは。

相手の他愛もない挑発に乗って、喧嘩騒ぎを起こした。
好きだった女には酷い言葉を投げつけて遠ざけた。
信頼を得たいと思っていた大人たちを甘く見て、不誠実に振舞った。
そうして父さんや母さんを・・・怒らせて泣かせた。

こんなの、まさしく。

YS「・・・若気のいたり、だな」

あまりにありきたりではあるが。
10代だったときの俺は、そうとしか言い表せない。
そして、こうして後々になって苦しむことも。
ありきたりといえば・・・そうか。

YS「今でも思う。なんであのときあんなことしちまったんだろうって」

「うん・・・」

YS「なんであんな・・・心にもない言動で家族や大事なヤツを傷付けて。
平気でいられたんだろうってさ」

「うん・・・」

聞き役に徹しているAの表情は―真剣なもので。

だからだろうか。
それともあの頃の俺をわずかにでも知る―彼女と話しているからなのか。
普段は口にすることのない気持ちがこぼれ出てくる。

やっぱり・・・もう1杯飲むかな。
ウイスキー。

なんつーか・・・シラフでいるべきじゃないだろ、こんなの。