BE THERE vol.6

Lock me. ページ32

自分でも・・・知らなかった。
私にこんな―
熱くて。激しい感情があるってこと。


それはついさっきｼﾞｮﾝｳﾝさんにぶつけたばかりの。
怒りとか憎しみだけじゃない。


自分以外の誰かを。
こんなにも―ただ欲しいと思ってしまったこと。


過去に唯一愛した―あの人と居たときですら。
ここまでの欲を抱いたことはなかった。


目の前のこの男の人は、いつだって私の知らない私を引き出して。
それが怖いって。
何度も思っていた。


これ以上私を・・・私じゃなくさせないでって。
そんな思いすらありながら。
それでも私は・・・


「ん・・・は・・・」

YS「・・・」


ｼﾞｮﾝｳﾝさんと口唇を重ねて。
絡みつくように互いに触れ合う。


甘やかで・・・柔らかい時間なはずなのに。
どうしてでしょうね？
切ないねって。
多分、私たち。同じことを思ってる。


だけどもう、恥ずかしさなんてとっくに超えて。
今はこの人に―私の全てを知って欲しかった。


互いに求め合っていたようで。
きっと・・・先に欲しがったのは私。


日本というこの地でも。
ｼﾞｮﾝｳﾝさんの声を聞きたいと思っていたのは私。
ｼﾞｮﾝｳﾝさんに会いたいと思っていたのは私。


私の髪に指を通しながらも。
ｼﾞｮﾝｳﾝさんに顔を上げさせられる。


「・・・」

YS「・・・」


彼の細められた瞳と視線がぶつかって。


ああ・・・嫌。
嫌、なの。
あなたと・・・離れていたくない。


「・・・はぁっ・・・。ｼﾞｮﾝｳﾝさん・・・！」

YS「んっ・・・」


横たわったｼﾞｮﾝｳﾝさんの上に乗ったまま。
その体にしがみついて。
やっぱり私は。彼を欲しがっていた。


重なった口唇を通して。
私の中の、自分でも目を背きたくなるようなドロドロした感情を流し込むように。
舌を絡ませる。


もう・・・我慢しきれずに。
互いの衣服に手をかけたころ。


ざあっ・・・


「・・・！」

YS「っ・・・！」


まるでその罪深さを戒めるかのように。
私たちの足元が―なまぬるい温度の水にすくわれる。


それにハッとして、振り返ると。
いつの間にか・・・潮が。
もうここまで満ちてきていたのだった。


「・・・」

YS「・・・」


ｼﾞｮﾝｳﾝさんの胸元に添えていた私の手を。
彼がそっと掴んで・・・そこから遠ざけた。
ゆっくりと体を起こしたｼﾞｮﾝｳﾝさんは。


YS「そろそろ―戻ろう」


それだけ言って、体中についた砂を払った。


もう・・・夕陽なんて。
とっくに沈みきっていた。

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