BE THERE

Fighting-YS ページ49

夏のジリついた空気の中―車を走らせる。


外は死ぬほど暑いが、こうやって冷房を効かせていれば、それも一時的に忘れそうで。
できることならこのまま快適なドライブを続けていたいくらいだ。
今日はオフだし、な。


そういやオフなんて。
随分久しぶりなんじゃないのか？


ニューアルバムのカムバックに始まり。
歌謡祭や歌番組の出演。あとは写真集の撮影なんかも。


その合間には。
気の強い彼女と別れたりとか、親知らずが腫れたりとか。
個人的なことも含めて・・・いろいろありすぎたな(笑)


俺たちSJの仕事は―天から与えられた、唯一無二のもので。
なんて。
んなこと言ったら、ｼｳｫﾝあたりにキラキラした目で見られそうだが。


だけど、それに無我夢中になっているうちに。
ひとつの季節がいつの間にか過ぎ去っていたなんてのも―
今の俺たちにとっては、もはやざらなことだった。


多分まだ始まったばかりのこのクソ暑い季節も。
あっという間に過ぎていくんだろうな―。


ビーチボーイズの音楽をカーオーディオで流しながら、ガラにもなくそんな思いに耽る。
最近、宿舎でも外でも音楽を聞くときは―ジャンルを問わず夏っぽいものの選曲をすることが多かった。
別に意識してるつもりは無いんだけど、な。


YS「さて―」


俺は車を停めて、自分ちのブランドのサングラスを外した。


この涼しい空間から外に出るのはかったるい。
それに、まだまだ心地良い音楽の世界にも浸っていたい。


だけど。


YS「彼女。いるといいな」


俺が見つけた―
童話の中に住んでいるような―彼女に決まってるさ。


＊


YS「マジか・・・；」


まだ午前の早い時間ともいえる―俺やSJが世話になる病院。


親知らずの抜歯のその後はすこぶる良好。
仕事の疲れはあるが、五体は・・・一応満足。
そして今日は貴重なオフ。


にも、関わらずここに来ている俺は。
たくさんの人で溢れかえったこの場に絶句していた。


受付に目をやると、電光掲示板の「待ち時間40分」の文字が入って来る。
おいおい。その待ち時間って診察のじゃなくて、受付のかよ。
信じられん・・・。


受付の中ではこの前の―
Aが着用していたものと同じ制服姿の女たちが、忙しなく立ち回っていて。
だけどその中に彼女は見当たらない。


くそ・・・ここに来ればすぐに見つかると思ったんだが。
甘かった、か？


俺は馬鹿げていると思いながらも。
仕方なしに順番待ちの券を、発券機から引き抜いた―。

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