BE THERE

雨とアイスコーヒーと俺。-YS ページ4

テーブルの上に置かれた―
コーヒーのグラスをぼんやりと眺める。


ぼんやり。
そうなるときの俺は、ホントにひどくボーーっとした顔つきになるらしい。
自分でも自慢だと思っている俺の目が。
糸みたいに、細くなるんだとさ。


確かに俺の目はこの国の男特有の。
まぁ、なんというか。細い目だが。
「糸」って・・・なんともビミョーな表現だな(笑)


「ｲｪｿﾝｵｯﾊﾟの瞳は、まるで三日月みたい」なんて。
可愛くもうまいことを言ってくれるファンたちも一応いるんだが、な。


今、このときに。
そんなことを考えている俺は、まさしくボーーっとしていたわけで。
コーヒーがなみなみと注がれているグラスに目線を落としたままだった。


コーヒー・・・ホットのが好きなんだけどな。
今日は晴れてはいないものの、じめじめと蒸し暑かったもんだから。
珍しくアイスコーヒーを注文していた。


今日は、これで正解。
汗をかきだしたグラスの表面と
あっという間に溶け出して―カラン、と澄んだ音を発する氷が涼しげだ。


そういうちょっとしたものに。
夏の到来を思わせる風情を感じていたころ―


「ちょっと・・・ｲｪｿﾝｵｯﾊﾟ。聞いてますか」

YS「・・・！」


俺が感じていた爽やかさをぶち壊してくれるような、声が。
俺を現実に引き戻した。


あ・・・あーーびっくりした。
彼女って、こんなに低い声だったか？


俺は細めていた目をしばたたかせて。
正面に座っている女へと、顔を上げた。


YS「んーー。悪い、なんだっけか＾＾」

「私の話、聞いてますかって。聞いてるんです」

YS「ん・・・んーー？」


盛大にため息をついてくれた女が。
うんざりしたように肩をすくめて、目の前のコーラの入ったグラスに口をつけた。
こっちはこっちでなんか美味そうだな(笑)


炭酸に全く気圧されることなく。
ぐーーっと一気に半分くらいまでコーラを飲んだ女が、
若干ではあるが乱雑な動作でそれをテーブルに置いて―


「私と別れてください、ｲｪｿﾝｵｯﾊﾟ」


そう切り出した。


俺の左の耳には。
窓の外から、雨がしとしという音が。
静かにだけど聞こえて。


あーーなんか。
別れ話をするには、うってつけのシチュエーションって感じだな。


まるでテレビドラマのワンシーンに立ち会ってるみたいだ、なんて。
またしても、そんなことをぼんやり思ってしまった俺は。


彼女のその言葉に。
動揺も、怒る素振りも。


嘘でもジョークでも無く―
してやれなかったわけで。

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