BE THERE

待ち焦がれる ページ3

ロッカールームで、制服から私服のT-シャツとハーフパンツに着替えて。
病院の広い待合室を通り抜ける。


ここは―私が勤務するｿｳﾙの国立病院。
複数の診療科が設けてあって、医療技術も最先端。
救急対応も迅速なところで。


そんなだから〜ここのドクターやナースはもちろんのこと。
私みたいな受付事務も、夜勤なんてのはざらだった。


だから今日も私は夜勤明け。
もう2年目の勤務ではあるけれど〜
この昼夜が逆転した生活って、まだなんとなく慣れない。


朝の8時15分。
外来患者の受付の開始時間をまわった今。
待合室は、お年寄りや、小さい子どもを連れた人たちでごったがえしている。


ちらりと受付カウンターを見やると、エラ主任が中で早速パタパタと駆け回っていて。
うーん、やっぱり今日も忙しくなりそう・・・。


もう夏に近いから、風邪とかインフルエンザの患者さんは少なくなったけど。
疲れ目から盲腸炎の緊急オペまで。
いろんな症状でかかりにやってくる人たちで、ここの病院は大繁盛ってところ。


ホントは、私たちの忙しさがどうこうじゃなくて。
苦しむ人が一人でも少なくなればいいのにって心から思うのに。
病院なんて・・・繁盛しないに越したことない。


なんて。
そんなきれいごとみたいなことを思ってしまう私は、まだまだ子どもなのかな。


でも、とりあえず。


「今日も頑張って働いたね」


自分で自分を褒めたげて。
私は足早に、病院を出た。


＊


外に出ると、まだ相変わらず雨が降っていたから。
持ってきていた折りたたみの傘を広げる。


昨夜、出勤してきたときは降ってなかったけど
持ってきておいて良かったな。
なにせ、今は梅雨。
いつどんなときに、突然の雨に見舞われるかわからないもんね。


てくてく歩き出すと―
鼻先にこの時期特有の、湿っぽい空気というか匂いを感じ取る。


雨やベタベタする湿気は苦手だけど。
でも梅雨は・・・わりと嫌いじゃない。


「もうすぐ夏が来るんだー！」って。
輝かしい季節を待ち焦がれているのが楽しい。
この梅雨を抜ければ―


「韓国での・・・3度目の夏、か」


そうポツリとつぶやいて、傘の柄をくるんと回す。
雨粒がまた腕のあたりに落ちてきて。


あーーなんだろう。
すごく疲れてるんだけど。
なんか、泳ぎたい気分。
今日もデスクワークで、肩がこわばってるの感じるし。


「よし！ひと泳ぎしてこよう！」


気分の赴くままに―
今朝はそうするって決めた。

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