BE THERE

VIPの素性 ページ15

PC端末で、「ｷﾑ・ｼﾞｮﾝｳﾝ」という名前で―
1984年生まれの人の電子カルテを探し当てる。


苗字も名前も。
この国ではありふれたもののように思えるけど〜この人が。
うちの病院のVIP患者、か。


そんな人に、わずかに興味が湧いて。
ちょっと公私混同ではあるんだけど〜カルテの今までの来歴のところにさっと目を通す。


風邪に、足の捻挫に、腰痛に・・・。
確かに何度かかかっているみたいだけど。
あ・・・でも、そのどれもが救急外来みたい。


「Super Junior―って。聞いたことない？」

「え・・・？す、すーぱーじゅにあ？？」


主任の口から唐突に出された、謎の単語に。
私は目を白黒させた。


「SJっていって。韓国の国民的アイドルグループなんだけど」

「は、はぁ。私、そういうの疎くって」


家にいるときは語学の勉強ばかりで、テレビなんてほとんど見てこなかったし。
見るとしてもニュース番組ばかりだった。


それに、詳しくはわからないけど〜
韓国のアイドルグループって、ものすごくいっぱいいるよね？
とてもじゃないけど、そういう方面まで気を回すことなんてできなかったんだもの。


「ここは、そんなSJの子たちのかかりつけの病院ってわけ」

「へぇ〜〜」

「私ももう、ここでの勤務長いからね。何人かは見たことあるわよ＾＾」

「アイドルっていうからには、きっとものすごくかっこいい人たちなんでしょうね」

「でも残念！今日の子は、グループの中でも地味めな子よ(笑)」

「えっ(笑)」


主任にそう付け足されて、ちょっと肩透かしを食らった私。


だけどアイドルも―やっぱり一人の人間ってわけか。
こんな時間に親知らずの治療に来るなんて・・・よっぽど我慢できなかったのね。


私は「ｷﾑ・ｼﾞｮﾝｳﾝ」さんのカルテをプリントアウトした。
さ、これをソン先生のところに持って行かなきゃ。


「じゃ。ちょっと口腔外科まで届けてきます＾＾」

「ええ、お願いね。あとA、あなた今日は早夜勤でしょ。
それが終わったら上がっていいわよ」

「はい、主任＾＾」

「ふぅ・・・やっぱり呼んでくれないわけね。ｵﾝﾆ、って」


主任の呆れたような声を背中に浴びて。
私は苦笑しながら、受付カウンターを出たのだった。


そして、出たところでハッと我に返る。


そうだ―その患者さん。
もう来てるのよ・・・ね？
どうしよう、なんだかキンチョーする。


だって今まで日本でだって。
アイドルの人に会ったことなんてない・・・。

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