12 ページ12
ㅤ
「美味しい…」
「ここのカフェ、ほんまに外れないよな」
“来れてよかった〜”と幸せそうな表情でパンケーキにナイフを入れるマナ。
ランチでもディナーでもないこの時間帯は人が少なくて、新メニューを堪能するにはぴったりの静けさだった。
お皿の上が綺麗になったところで、“そういえば聞いてなかったんやけど”と口を開く。
「るべと気まずくなった原因って何なん？俺が気になるだけやから、言いたくなかったら言わんでええけど」
「…星導くん、何か勘違いしてるみたいで」
「勘違い？」
「そう。名前は伏せるけど、私じゃなくて他の子を幼馴染だと思ってる」
晒し上げるようなことはしたくないから、名前は言わなかった。
2年生は全部で6クラス。私が伏せていれば、きっと誰にも広まらない。
「忘れるのは仕方ないけど、今までの思い出を全部他の誰かに上書きされたと思うと悔しかった。
それで、怒鳴っちゃったの。ショウの馬鹿って」
彼の方も記憶を失くして意味が分からないまま怒鳴った私になんて近付きたくないだろうし、私も私で近付いたら泣きそうだったから、つい最近までは避けていた。
“これが原因。だから星導くんは何もしてないよ。全部、感情的になった私が悪かった”
そうまとめると、今までは真剣な顔で頷くばかりだったマナが首を横に振った。
「それはちゃうやろ。全く非がないかって言うたらそうでもないけどAの怒る気持ちはようわかるし。
喧嘩だけでここまで拗れるとは、俺は思わんけどな」
「…ごめん、つまりどういうこと…？」
「んふっ、…一気に話しすぎたわ。つまり、原因は他にもあるやろうしそんなに自分を責めなくてもええんやない？ってこと！」
「そっか。ありがとう」
ドリンクも全て空になり、お会計をしてカフェから出る。
私とマナの家はここを挟んで反対方向にあるからここでお別れだ。
マナがこちらに向き直って、“ごめん、もう1つだけええ？”と手を合わせる。
「ショウのこと、今でも嫌い？」
「嫌いじゃ、ない」
「それが聞けて満足やわ。じゃ、また明日！」
小さくなっていく背中を見ながら自分の言葉を脳内で繰り返して、改めて気付く。
好きじゃないけど、嫌いでもない。
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 445人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sutoro(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます！最初の方は私も書いてて苦しいシーンが多かったです…終わり方結構悩んだのでそう言っていただけて嬉しいです！こちらこそ、読んでいただいてありがとうございました！ (12月26日 12時) (
レス) id: 47c1806eee (このIDを非表示/違反報告)
さくら - 素敵すぎて…😭😭最初の方がどうも不穏でどうなっちゃうのかずっとしょぼしょぼしてたんですが、きれいに優しくまとまってて泣きそうになっちゃいました……素敵な作品をありがとうございます💕💕 (12月26日 0時) (レス) @page40 id: 93744aa2ce (このIDを非表示/違反報告)
Mer(プロフ) - トヲルさん» コメントありがとうございます！励みになります。更新頑張ります！ (12月12日 19時) (レス) id: 47c1806eee (このIDを非表示/違反報告)
トヲル(プロフ) - コメ失礼します！読んでいて心の涙腺めっちゃ崩壊しまくりました！更新応援してます！コメ失礼しました！！ (12月12日 18時) (レス) @page19 id: 1464d042d3 (このIDを非表示/違反報告)
Mer(プロフ) - 四肢さん» すみません。今気付きました。ありがとうございます！ (12月11日 1時) (レス) id: 47c1806eee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Mer | 作成日時：2023年12月10日 18時
