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でも、もう遅かった。
いや、逃げるのを拒んだのかもしれない。
いつの間にか、あたしは追い詰められていた。
背中は壁と密着していた。
お兄さんは正面に立って、吐息が感じられるほどの距離にまで近づいていた。
『お、にいさ…？』
普段、男の人との関係があまりないあたしは、こんなことも初めてなわけで。
いわゆる、壁ドンなんか初めてだ。
恐怖心が込み上がる。
だけど、体は動かなかった。
怖いけど、目の前にいるお兄さんがやっぱりかっこよくて、綺麗で。
そして、逸らせない目線。
漆黒の瞳はあたしのことを逃してはくれなかった。
吸い込まれそうになるのをなんとか抑えながら、不安な顔でお兄さんを見つめる。
だけど、このまま見ているとあたしがどうにかなっちゃいそうで。
それが一番怖くて。
『お兄さん、名前…なんて言うの？』
あたしは逃げてばっかりだ。
お母さんのことも、お兄さんのことも。
逃げないでしっかり受け止めていれば、何かが変わっていたかもしれない。
逃げることはいいことではないと思ってる。
今回の、家出の事からしてね。
でも、今は違う。
お兄さんは、その目で悪い事じゃないんだぞ、って言ってくれている気がする。
本当に気のせいかもしれないけど。
あたしは、そう感じ取れた。
こんな時でも優しさが滲み出てるなんて…。
でも、じゃあなんでこんなことするの…？
ジ「カワグチ ジン。」
そう言ったお兄さんにあたしは返答することはできないまま、口を塞がれた。
お兄さんの、唇に。
頭の後ろに手を回され、固定される。
衝撃的すぎて、体は動かない。
お兄さんは、少し苦い味がした。
唇がしばらく触れていると、息が苦しくなり呼吸をしようとする。
その瞬間を狙っていたかのようにお兄さんの舌があたしの口内へと侵入してくる。
絡め合う舌がとても甘くて。
痺れるような感覚が堪らなくて。
なにより、あたしには愛があった。
きっと、お兄さんに一目惚れしたんだ。
あたしも頑張ってお兄さんについていこうとする。
でも、あまりにも激しいキスにあたしはされるがままで。
カワグチ ジン。
それがお兄さんの名前。
なんだ、案外普通じゃん。
心の中は余裕なのに。
『っぁあ、ジっ、ン。』
実際余裕なんかどこにもなくて。
お兄さんの名前を呼んだのも、無意識で。
きっと、あたしにはお兄さんのことを考える頭しかないんだ。
そんなことを考えてたら、心做しかキスはさらに激しくなった。
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めら(プロフ) - ろっとさん» コメントありがとうございます！すごく励みになります（；＿；）更新ペース落ちないよう頑張ります！ (2018年8月19日 18時) (
レス) id: 3d1de3f670 (このIDを非表示/違反報告)
ろっと - 最近更新多くうれしいです!! (2018年8月18日 23時) (レス) id: 86fd57fbe3 (このIDを非表示/違反報告)
めら(プロフ) - 希美さん» 嬉しいですありがとうございます！！更新頻度落ちないように頑張ります！ (2017年9月9日 0時) (レス) id: 8a36d932d4 (このIDを非表示/違反報告)
希美(プロフ) - すごく面白くて一気に読んじゃいました（ ; ; ）！更新待ってます！ (2017年9月7日 20時) (レス) id: ab613d3654 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めら | 作成日時：2017年9月3日 21時
