待ち合わせ [Fuma K.] (ページ13)

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13話ページ13

視点：菊池風磨

「彼女さんいるんでしたっけ」

「あ、いや…今は…いない。かな」

…しまった。完全にやった

流れに流されてしれっと嘘をついてしまった。

本当は彼女いるんだけど

なんかAさんの方から誘ってくれたっていう部分もあってか
俺の中の「逃しちゃダメだ」っていう信号を感じてる

「そっか。そうなんですね、てっきりいるんだと思ってました」

「しばらくいない…かな。てかなんか、いいよそんな堅苦しくなくて」

「堅苦しいですか？」

「うん、だいぶ笑敬語も必要ないし。」

「そっか。じゃあ〜…気を付ける。」

「よく来るの？ここ」

「ここぞって時には…」

「今日はそのここぞって時なんだ」

「あ、えっといや、まあ…」

「そこはそうって言ってよ笑」

「ごめん、笑」

それから、最近何してる、とか
趣味は何？とか、当たり障りのない会話が続いて

夜も更けていく

時計の針は2時を指してる
見ている感じ、Aちゃんはお酒そんなに強くなさそう。

「ね、Aちゃん、帰ろ」

「もうですか？」

そう見上げる顔はとろんとしてて色々な意味でやばい。
まじでこの手の顔に弱いんだって

「だってもう酔っ払っちゃってるでしょ、ほら。」

「お会計するなら、私のお財布、はい」

「いい、大丈夫。その代わり今度ご馳走して」

「え！今度があるですか？私もうだめかと」

「そんなことないよ、ほら立てる？」

そのとき
カウンターからカウンターから立とうとしたAちゃんが
ふらついて

「っぶね！」

倒れ込んでくるAちゃんを抱きかかえたとき

自分でも押してはいけないスイッチを押してしまったような感覚がした

学生の頃はこう言うこと、たまに気の迷いでもつれこむこともあったけど
なんかちゃんとした大人になってからはしてないから
自分でもちょっと戸惑う

酔った勢いって、最悪だけど
その一瞬は何よりドキドキする

背徳感？それすら分からないけど

アドレナリンがブワッと広がっていくのがわかる

「ねえ、この後どうしよっか。」

自分でもこの質問はずるいと思う
でも、わかりやすく誘うのはなんか嫌で

「え？」

「決めてないの？」

「あ、えっと…」

「じゃあ〜、じゃんけんで決めよ。Aちゃんが勝ったら、タクシー乗り場行って解散」

「風磨くんが勝ったら？」

「俺がしたいようにする、いい？」