４４。〈動き出す〉 ページ44
・
『うーん、どれがいいかな〜』
髪の毛を乾かし終わった私は、部屋に飲み物がない事に気づき、一階の自販機までやってきた
いやー、最近の自販機ってすごい種類あるよね
カップ麺もあるって凄くない？
『夜食にカップ麺は、流石にマズイか』
私もそろそろ今後の体型維持を考えなきゃいけない年齢だし
ここは無難にリンゴジュース…
「うん、ごめんね」
『ん？』
急に誰かの話し声が聞こえた
ここは旅館な訳で、別に知り合いの声じゃないかもしれない
それなのに
私は妙に、その会話が気になった
『目黒？』
視線の先には、誰かと連絡をとっているらしき後輩の姿
表情まで見えるほど目は良くない
だけど
「だったら、今度一緒に行けばいいじゃん」
その優しい声色で、どんな顔をしているかなんて想像するのは容易く
相手を大切に思う気持ちが伝わってきた
ああ、彼女か
そうだよね
1日と言っても、恋人たちにとっては半年のように長く思ってしまう
それは私も経験済みだから理解できる
なのに
電話の相手が彼女だと気づいた途端
胸に締め付けられるような痛みを覚える
違う、これは彼女への罪悪感で
目黒に対する気持ちじゃない
だから
『止まってよ、』
溢れる涙は行先もなく、頬から落ちるだけだ
もういいよ、聞きたくない
そう思っているのに、足が石のように固まって動けない
苦しい
私が耳を塞ごうとした、その時
「はいはい、俺も大好きだよ」
『っ！』
確かに聞こえた “ 好き ”
私には誰も与えてくれない言葉
もう、わかんないや
なんで悲しいのか
どこが痛いのか
いつから、こんなに弱くなったのか
「ん、じゃーね」
目黒が通話を終え、足音がこちらに向かってくる
見られる恐怖からか私の体は軽くなり、その場から走って逃げ出した
今日の私、逃げてばっかり
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2182人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ブッタ - 綾音さん» 返信遅くなり、申し訳ありません！コメントありがとうございます。満足していただき作者として嬉しいです！続編もよろしくお願いします！ (2021年2月9日 15時) (
レス) id: 2e3f726332 (このIDを非表示/違反報告)
綾音(プロフ) - とても素敵な作品でした！！もう感情がぐるぐるしてしまって、渡辺にも目黒にも康二の優しさにもドキドキしました（笑）続編も楽しみに今から読んできます！！ (2021年2月2日 2時) (レス) id: e120810d5e (このIDを非表示/違反報告)
ブッタ - 佐藤ウルさん» コメントありがとうございます。受験頑張ってください！心から応援の気持ちを込めて、私も更新頑張ります！ (2021年1月9日 8時) (レス) id: 2ccd10a35b (このIDを非表示/違反報告)
佐藤ウル(プロフ) - めちゃめちゃめちゃめちゃ面白すぎて毎日の楽しみです！私受験生なので一日中勉強ばっかりなんですが息抜きに最高です！！！これからも更新楽しみにしてます！！ (2021年1月8日 22時) (レス) id: 1685536f9d (このIDを非表示/違反報告)
ブッタ - よっぴさん» コメントありがとうございます。そのような感想をいただけ、感無量です！程よく最低を目指してます笑。これからも楽しんでいただけるように更新頑張ります！ (2021年1月7日 21時) (レス) id: 322a692742 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ブッタ | 作成日時：2020年12月22日 21時
