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陽彩side
番組内の歌の収録が始まった。
ŹOOĻの四人が立ち位置にスタンバイすると、曲のイントロが流れ出した。
世間を散々騒がせ、私の再生数を抜いた曲。
ちゃんと聴くのは今回が初めてだ。
棗の手によって作り上げられたその曲は、イントロだけでも人を惹きつける魅力がある。
音楽に携わる身としては、尊敬するし、その才能が羨ましいと同時にすごく憎らしい。
思わず聴き惚れていると、スタッフ達がざわつき始めた。
「ŹOOĻさん？どうしました？」
「歌う気分じゃない」
センターの亥清から放たれた言葉に、思わずため息が出そうだった。
何しに来たんだこいつらは。
「……じゃあ先に藤咲さんの方から撮影しましょうか！」
困っているのがみえみえの顔でスタッフがこちらを向く。
そんな顔されたら従うしかない。
『棗。私が撮影してる間、亥清悠に言ってやってよ。
素敵な歌なんだから、聴かせて欲しいって』
棗の近くまで歩いていき、顔を近づけて小さく言った。
それを聞いた棗は柔和な表情を浮かべたまま。
「……亥清さんが歌いづらいと感じる空気を作ってるのは貴方なんですから、貴方が謝った方がいいのでは？」
その言葉を聞いた途端、胸の奥から怒りが込み上げてくるような感じがした。
『は？なにそれ、本気で言ってんの？
あんたは今、自分が魂込めて作った歌をメンバーに歌いたくないって言われてるんだよ！？
曲の製作者なら怒ったり悔しがったりしろよ！！』
昔の棗なら、確実に怒っていただろう。
子役時代も、少しでも私が棗の演技に文句を言えばわかりやすく不機嫌になる。
自分の好きな事がとことん大切な棗にとって、【歌いたくない】と言われるのは癪に障るはずなのに。
それでも棗は表情を変えない。
張り詰めていた糸が、ぷつんと切れた気がした。
『…………そっか。かなり変わっちゃったね、巳波くん』
熱くなっていた頭が、氷水をかけられたかのように突然すっと冷えた。
関わるだけ無駄なのかもしれない。今の棗には。
それがわかったところで、関わらないという選択肢を取れるわけではないけど。
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作者の珍獣坤。です。
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珍獣坤。 - 勿体なさすぎるお言葉……!!ありがとうございます。励みになります!他作品の片手間にはなってしまいますが、丁寧に書いていくつもりなので今後も楽しみにして頂けると幸いです😭👏🏻✨ (12月4日 22時) (
レス) id: cebb1c38ee (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。更新お疲れ様です！棗巳波くんの性格を生かした面白い作品出会えたこと、とても嬉しく思います。夢主の気が強い感じもすごく好きで、これからどうなって行くのかとっても楽しみです！これからも心から応援しております (12月4日 16時) (レス) id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
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