36：『魔』 ページ10
｢いらっしゃい、Aちゃん……おや、顔が真っ赤だよ｣
｢見ないでください…｣
医務室に入って椅子に座る。まぁ理由は分かるけどね、と云う首領を見て肩を小さくした。万年筆を手に持ちながら何かを書き込む首領を見つめながら、意識は遠くにあった。
｢薬は効いているかい｣
｢まだ大丈夫です。でも時間の問題かと…｣
渡された薬はだんだん、私には効かなくなってくる。其れは耐性が付いてしまうから。だから少しずつ強いものを貰っていかないと全く効かなくなってしまうのだ。
｢流石にこれ以上に強い薬は無い。また酷くなったら教えて欲しい｣
はい、と返事をした声が妙に震えていた。
嗚呼、私は怖いのか。
自分がもう直ぐ死ぬかもしれないと云う事が。
Aちゃん?と呼ばれて意識を戻す。続けて何問かの質問に答えた。
最近発作は酷いが任務はどうするか。
任務中に倒れた時にどう対処するか。
最近あった嬉しい事、辛い事。
これからについての意思確認。
首領に嘘は通せないから、ありのままに答えた。
勿論、兄の事も。
｢紅葉君にはこの事を伝えても良いかい?｣
｢はい。何時かはバレてしまうでしょうから｣
｢分かった………中也君には??｣
｢…云わないでください｣
お願いします、と頭を下げた。Aちゃん、と声が掛かるが顔が上げられない。膝の上の拳がカタカタと震えていた。
｢理由を尋ねて良いかい??｣
｢ッ……失望…されたくない｣
私を嫌う兄が、もう直ぐ死ぬからと云う理由で優しくしてくれるとは限らない。其れに、そんな理由で元のように戻りたい訳じゃない。
｢Aちゃん、聞いて欲しい。身体が不安定になっている時に1番心の支えになる物は何か分かるかい?｣
静かに首を横に振る。
｢其れはね、大切な人の存在だよ｣
｢心が崩れれば身体も崩れる。人の心が比較的安定している時は直ぐそばに大切な人が居る時だ｣
そう思わないかい?と尋ねられて顔を上げた。
目の前に座る首領は微笑んでいた。
｢…出来るでしょうか｣
独り言のように零れ落ちる。
⎯⎯⎯⎯今さら出来るだろうか。
⎯⎯⎯⎯元に戻れるだろうか。
｢大丈夫だよ、Aちゃん｣
｢君はもっと我儘を云って良い｣
『時には我儘になってみたまえ、Aは我慢し過ぎだよ』
｢ふふ、太宰さんと同じ事を云う｣
｢え〜??太宰君と?嫌がられそうだね｣
｢そうかもしれませんね｣
席を立ったAの目からは迷いは消えていた。
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夏菜子(プロフ) - 更新楽しみにしてます！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！ (10月30日 21時) (
レス) @page27 id: 7ba2b47e72 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ星(プロフ) - キャアアア！！！おめでとうございます🌸立原！よくやったな！！（笑） (9月21日 21時) (レス) @page4 id: a35decf8bd (このIDを非表示/違反報告)
萩野千紗 別垢 - 凄いです！！文才ありまくりです！！その文才を下され((結論・この作品大好きです！！更新楽しみにしています！！ (9月19日 21時) (レス) @page2 id: 5c4afa8e2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mei | 作成日時：2023年9月18日 10時
