32:『幸』 ページ6
観覧車から降りて暫く歩く。
まださっきの余韻が抜けなくて、ふわふわしているような気分だった。すっかり日は落ちていて夜が迫っている。
「ン??…何だあれ…」
「イルミネーションだ…行ってみる?」
立原君が頷いたので足を進めた。去年は確か任務帰りに見たっけ。殆ど覚えていないけど。
広場の真ん中にある大きなクリスマスツリー。
眩しい程に光り輝いていた。
私の生きている世界からは掛け離れていた。
今日1日そうだった。でも楽しかった。
「ねぇ、立原君」
「あの!!Aさん」
話し始めたタイミングが合わさって声が被った。あ…と云う声も同じで、顔を見合せて笑う。
「お先にどうぞ?」
「じゃ、じゃあ…あの……」
バチンッ!!と顔を叩いた立原君は、顔を真っ赤にして云った。
「す、好きです!!…付き合ってくださ、い!!!!」
反射するように彼の声が響く。
云われた言葉を頭で理解しようと藻掻くけれど、緊張しているからかなかなか上手くいかない。
「あ、の…」
「ぃぃぃ嫌だったらわ、忘れてください……」
違う、そう云いたいんじゃない。
「嬉しい…けど……私は…」
もう永くない。何時まで貴方と居られるか分からない。
離れてしまう怖さを知っているから、余計に怖い。
不意に抱き締められた。
「?た、立原君…」
「お、教えてください。Aさんの心の中…吐き出せばきっと……」
恐る恐る手を回して抱き締めると、言葉が溢れてきた。
「私、もう…永くないの。昔の名残りで後半年も無い……。嬉しい…嬉しいんだよ。でも、きっと立原君とずっと居られない」
嗚呼、云ってしまった。
太宰さんにしか、未だ云っていないのに。
「だから……私には…」
「そんな事無い」
顔を上げると立原君は笑っていた。
「諦めるなんて…Aさんらしくねェ。俺はそれでも良い。貴方と居れるなら。だから……」
⎯⎯⎯⎯付き合ってくれませんか?
『良いんだ、A。素直になってみたまえ』
彼の人の声が聞こえた。
目を閉じて、一つ息を吐くとAは目を開ける。
「立原君」
そっとAは微笑んだ。
「此方こそよろしくお願いします」
「!!!あ、ありがとうございます!!」
と、突然拍手が湧いた。見れば周りから注目されていたようだ。気まずくなって其の場から走り出す。
2人の手は繋がれたままで。
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夏菜子(プロフ) - 更新楽しみにしてます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (10月30日 21時) (レス) @page27 id: 7ba2b47e72 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ星(プロフ) - キャアアア!!!おめでとうございます🌸立原!よくやったな!!(笑) (9月21日 21時) (レス) @page4 id: a35decf8bd (このIDを非表示/違反報告)
萩野千紗 別垢 - 凄いです!!文才ありまくりです!!その文才を下され((結論・この作品大好きです!!更新楽しみにしています!! (9月19日 21時) (レス) @page2 id: 5c4afa8e2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mei | 作成日時:2023年9月18日 10時