63:『し』 ページ36
私の名前は鏡花。
今はマフィアの玄関に居る。眉間に拳銃を突き付けられているけれど気にしない。
「何の用だ」
「……Aさんに会いに」
「其の鍋は何だ、毒薬か??」
そんな訳無いに決まっているのに。頭が詰まっていないのだろう。
溜息をつきながら口を開いた。
「これは……」
「銃を下ろせ、もう下がって良い」
声のした方を見れば、Aさんが歩いてきている所だった。
「Aさん!!」
「ごめんね鏡花。連絡しておけば良かったね」
「平気。早く行こう、そろそろ重い」
そう云うとAさんは受け取って運んでくれた。2人でAさんの執務室に入る。途中で何人かの黒服に会ったけれど、Aさんが居るから心強い。
久しぶりに入ったAさんの執務室は全く変わっていなかった。
「お茶で良いかな」
「うん。ありがとう」
台所へ入り、お茶を用意するAさんの後ろ姿をじっと見つめる。
少し痩せた……??
元々細い人だったけれど、今のAさんは明らかに細い。クリスマスの時なんかよりもずっと。
「鏡花、大丈夫??」
「あ……。うん、あと台所少し借りたい」
「全然使って。一通りあると思うから、好きに使っていいよ」
「ありがとう。少し待ってて」
頂いたお茶を飲んで、台所に移動する。流石Aさんは地位が高いだけあって、設備が完璧だ。
持ってきた鍋を火にかけて、お餅をオーブンで焼く。丁度いい焼き加減になったら鍋に入れて少し煮る。
「出来上がった」
お椀によそって戻ると、Aさんは難しい顔をして書類を見つめていた。でも足音で気がついたのか、顔を此方に向けるとAさんは笑う。
「凄い……いい匂いする」
「…私も一緒に食べても良い?」
「勿論。ほら、座って座って!!」
Aさんの正面に座って一緒に手を合わせた。
「「いただきます」」
ゆっくりと口に運んでいくAさんをじっと見つめる。目が合うと、微笑んでくれた。
「美味しい……!!」
「良かった、頑張ったの」
「滅多にお雑煮は作らないから…何年ぶりだろう」
そう云って笑って貰えると嬉しくなる。
Aさんは私の光。
マフィアで息詰まっていた私に、声を掛けてくれたのがAさんだった。
周りの人が殺しの任務達成を褒める中、Aさんだけは頭を撫でて、私の愚痴を聞いてくれた。
「Aさん」
「どうした??」
こんなに優しい人がマフィアになんて似合わない。
嗚呼神様、どうかこの人を幸せにしてあげて。
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夏菜子(プロフ) - 更新楽しみにしてます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (10月30日 21時) (レス) @page27 id: 7ba2b47e72 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ星(プロフ) - キャアアア!!!おめでとうございます🌸立原!よくやったな!!(笑) (9月21日 21時) (レス) @page4 id: a35decf8bd (このIDを非表示/違反報告)
萩野千紗 別垢 - 凄いです!!文才ありまくりです!!その文才を下され((結論・この作品大好きです!!更新楽しみにしています!! (9月19日 21時) (レス) @page2 id: 5c4afa8e2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mei | 作成日時:2023年9月18日 10時