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59:『っ』 ページ32

無機質な音が響く。

目の前に座る兄は、一向に目を合わせようとしない。ただじっと、何かを待っているような気がした。

「幹部」

「……何だ」

「お呼びになったのはどういったご要件で??」

「いや、其の……」

静寂。

さっきからずっとこの調子だ。

私自身も特に用事は無いし、兄も同じなのだろうけど流石に気まずいし心にくる。

嫌いな奴なんかと一緒に居たくない、なんて云ってた癖に。

「……か??」

微かながら声がして、顔を上げた。

「え…??」

「き、今日……帰って来るか?あ、その……家…に」

開いた口が閉じなかった。

「一応…帰ろうとは思ってますけど……」

「ほんとか!?」

子供のように飛び跳ねた兄に思わず笑みが落ちる。其れからもう一度頷いた。

「そうか…何……食いたい??」

「夜御飯ですか??」

「あぁ。Aが嫌じゃなきゃ。……何処でも良いし、何でも作る」

「そうですか」

何が良いだろう。最近はあまり食べられていない。だから何を食べたいのかも正直分からない。

だから、あの料理が自然と出てきたのかもしれない。

「鍋…が良い…」

「お、良いな。じゃあ買い出し行くか」

「何時くらい??」

「ん……5時には終わらせる」

「分かった。医務室で待ってる」

「了解、迎えに行くな」

丁度、兄の部下が報告に来たので別れる事にした。手伝おうか、と声を掛けたけれど首を横に振られてしまったので仕方ない。

大人しく少し休むとしよう。

「じゃあ……また」

「おう」

扉を閉めると、力が入らなくなった。座り込んで手で顔を覆う。

「良かっ……た」

本当に戻れるのか、分からない。

でも、少しだけ近付けた気がした。

其れが何よりも嬉しかった。


すっかり安心してしまったからかもしれない。

「あ、Aさ……え、Aさん!?」

私はその場で眠ってしまったらしく、立原君が運んでくれたの事だった。

「本当に焦りました!!!!」

「ごめん……で、でもね!」

私が話すと、立原君は自分の事のように笑ってくれた。

「良かったです」

「うん。良かった」

「……だからって廊下で寝ないでください!!!!」

「わ、分かりました??」




(因みにこの事は立原君→芥川さん→樋口ちゃん→首領へと伝わってちゃんと怒られた。

「真逆Aちゃんが……ふふ」

「お恥ずかしいです。止めてください!!!」

「可愛いのぅAは」

「うぅ……」

其の時のAの寝顔はマフィア内で高額で取引されているのはまた別のお話)

60:『た』→←58:『か』



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設定タグ:太宰治 , 中原中也 , 立原道造   
作品ジャンル:恋愛
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夏菜子(プロフ) - 更新楽しみにしてます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (10月30日 21時) (レス) @page27 id: 7ba2b47e72 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ星(プロフ) - キャアアア!!!おめでとうございます🌸立原!よくやったな!!(笑) (9月21日 21時) (レス) @page4 id: a35decf8bd (このIDを非表示/違反報告)
萩野千紗 別垢 - 凄いです!!文才ありまくりです!!その文才を下され((結論・この作品大好きです!!更新楽しみにしています!! (9月19日 21時) (レス) @page2 id: 5c4afa8e2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mei | 作成日時:2023年9月18日 10時

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