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58:『か』 ページ31

「A、あけましておめでとう!!」

「此方こそ。今年も宜しくお願いしますね」

病室には新年の挨拶に沢山の人が来てくれた。明日からは普段通り業務が出来そうだと首領に伝えると、彼は苦笑しながら頷いてくれた。

「無理はしない事、良いね」

「分かっていますよ」

「Aや〜また倒れるでないぞ?私の寿命が縮むからのぅ」

そんな話をして、やってきた光莉達にお年玉を渡し、午前中は終わった。午後から業務は始まると云うので、暇になるだろう。

「去年は…そっか。エリスと鏡花と遊んだんだっけ」

独り言のように呟く。

「一昨年は……任務だったかな」

血溜まりの中で新年を迎えたり、治と兄とゲームしながら年を越した事もある。それこそ今のように体調を崩していた事も。

「変わっちゃうんだね…全部」

あの頃の儘のものなんて、何処にも無い。

そう分かっていても何処か寂しい。

⎯⎯⎯⎯♪

電話が鳴って携帯を取る。見れば治からだった。

一瞬戸惑ったけれど、通話ボタンを押す。

「もしもし、あけましておめでとう」

『おめでとう、A。体調は大丈夫かい??』

「大丈夫だよ。治は??新年早々自 殺なんかしないでよ」

『そう云うと思ったよ。でも良かった』

何が?とは聞けなかった。携帯を持つ手に力が入る。

『そう云えば気になるのだけど、どうして私を名前で呼ぶんだい?最近はご丁寧に名字呼びだったじゃないか』

まぁ、嬉しいけどね!!と治が喜んでいるのが画面越しでも分かる。

マフィア時代(・・・・・・)、私は彼を名前で呼んでいた。と云うか、呼んで欲しいとただを捏ねられたから。其れは治が幹部になっても分からなかった事。

流石に治がマフィアから抜けたら戻したけれどね。

「気まぐれだよ」

『なーんだ。特別な意味は無いのかい??』

「ただの気まぐれ」

『……そっか』

本当はね、違うの。気まぐれなんかじゃない。

私がそう呼びたかったから。

だってもう呼べなくなってしまう。

「治」、と名前で呼ぶのはあの頃の証。

本当は治は寂しかったんじゃないかなって思う。

ふと時計を見ると、兄と会う約束の時間が迫っていた。

楽しい時間に休止符を打たなくては。

「またね、治」

『うん、また』

通話が切れると、無意識に溜息が出た。「また」が何時なのか、迎えられるのか分からない。

取り敢えず生きようと思う。

(織田作)に胸晴れるように。

抱き締めて離さずに

大事な物と今、私は此処で息をしている。

59:『っ』→←57:『な』



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設定タグ:太宰治 , 中原中也 , 立原道造   
作品ジャンル:恋愛
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夏菜子(プロフ) - 更新楽しみにしてます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (10月30日 21時) (レス) @page27 id: 7ba2b47e72 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ星(プロフ) - キャアアア!!!おめでとうございます🌸立原!よくやったな!!(笑) (9月21日 21時) (レス) @page4 id: a35decf8bd (このIDを非表示/違反報告)
萩野千紗 別垢 - 凄いです!!文才ありまくりです!!その文才を下され((結論・この作品大好きです!!更新楽しみにしています!! (9月19日 21時) (レス) @page2 id: 5c4afa8e2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mei | 作成日時:2023年9月18日 10時

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