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54:『の』 ページ27

目が覚めると青空が目に入った。それに何処ともなく浮かんでいるような感じがする。

「A」

「織田…作??」

「おはよう、A」

懐かしい声がして首を動かすと、隣に織田作が居た。

身体を起こして隣に座る。

どうして織田作が此処に居るのか分からなかった。

でも取り敢えず難しい事は考えたくなくて、織田作の手元を覗き込む。

「小説……??」

「嗚呼。Aも読むか?」

「ッ…良い。織田作が読んでいて」

もう殆ど見えないのだから。こんなに近くに居るのに、織田作の顔ですらぼんやりとしか見えない。

読めないのなら、やる意味が無い。

膝を抱える力が強くなった。

「じゃあ俺が朗読しよう」

「え……??」

「Aは聞いていてくれるか」

「あ…うん。勿論!!」

其れから織田作は声に出しながら読んでくれた。一人の主人公の恋物語だった。

恋物語(ラブストーリー)??珍しい」

「たまには読む。参考になるからな」

「…そう」

天国(此処)で、小説は書けるのだろうか。私には分からなかったけれど、織田作が嬉しそうなら其れでいい。

「あ!!A姉ちゃんだ!!おーい!!!!」

「みんな…あぁ、そっか」

抱きついてくる皆を受け止めながら、織田作を見る。

小さく頷いていた。

4年前に死んでしまった私の大切な人達。

あの時私が止めていれば、と後悔の念が高まる。

「ごめん、織田作」

「……じゃあまた珈琲を入れてくれ」

思わず吹き出す。

「ふふ…あはは!!其れだけで良いの??」

「Aの入れた珈琲が一番上手い」

「そっか。なら良いよ」

其れからは皆と遊んで気が付けば日は落ちかけていた。

と、突然織田作は云った。

「もう戻れ、A」

「織田…作??」

「お前は此処に居るべき人じゃない」

何の事か分からない織田作は続けた。

今私は危篤状態で、生と死の分け目の間に居る事。

完全に日が落ちれば、もう戻れない事。

引き返して貰う為に織田作が来てくれた事。

「でも……」

「行け、A」

背中を押されてバランスを崩した。

織田作の姿が遠くなっていく。

「織田作!!!!」

「もっとゆっくりしてから来い。約束だぞ」

そう云って笑う織田作に何か云おうとして口を開いた。

でも、其の前に私の意識は遠ざかっていった。

ねぇ、織田作。

ちゃんと頑張るからさ、

また会えた時にはちゃんと褒めてよね。

55:『恋』→←53:『こ』



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設定タグ:太宰治 , 中原中也 , 立原道造   
作品ジャンル:恋愛
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夏菜子(プロフ) - 更新楽しみにしてます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (10月30日 21時) (レス) @page27 id: 7ba2b47e72 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ星(プロフ) - キャアアア!!!おめでとうございます🌸立原!よくやったな!!(笑) (9月21日 21時) (レス) @page4 id: a35decf8bd (このIDを非表示/違反報告)
萩野千紗 別垢 - 凄いです!!文才ありまくりです!!その文才を下され((結論・この作品大好きです!!更新楽しみにしています!! (9月19日 21時) (レス) @page2 id: 5c4afa8e2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mei | 作成日時:2023年9月18日 10時

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