52:『の』 ページ25
久しぶりの仕事はやっぱり身体にきた。執務室のソファに横になりながら目を閉じる。
「薬…もう飲んじゃったもんな…」
在庫はあるが、市販薬じゃ効かない。もう慣れてしまっているから。だから痛みに耐えるしかない。
でも仕事は関係なしに続く。
「Aさん、入っても宜しいでしょうか」
「Aさん、此方にサインを……」
「次の作戦案のご検討をお願いします」
結局休めず、時計を見れば次の日だった。椅子から立ち上がる事でさえ身体が怠くて、其の儘机に突っ伏す。
「頭痛い……」
歯を食いしばって紛らわそうとするけれど、無意味だと知って諦めた。追い討ちをかけるように痛みは強くなって。
その度に思った。
いや、理解しなきゃいけなかった。
もう永くないと。
もう持たないと。
やり残したことは沢山あるのに。
まだ兄さんに認めて貰っていないのに。
立原君と付き合ったばかりなのに。
「ヒュ……ゲホッ!!う゛………」
ガツンと殴られたような衝撃にあった。
音がしなくなった。
世界が白くなった。
⎯⎯⎯⎯
バタバタと騒がしい廊下が気になって万年筆を置いた。何時もが静かだから声が目立つ。何かあったのか、と扉を開いて覗いた。
「おい、何があった」
「あ…中也さん。実は……」
目の前が真っ白になった。
其奴が云った事実が受け止めきれなかった。
「中原幹部!!!」
気が付けば走り出していた。
まるで戦地で戦っているような速さで。
「A!!!」
執務室に入ると、マフィアの中でも選ばれた医者が集まって慌ただしく動いていた。首領もその中にいた。
入ろうとした瞬間に、身体を掴まれる。
砂色の外套に俺よりも大きな身体。
誰かなんて見なくても分かっている。
「A!!離せッ!太宰!!!!!!」
「……」
でも太宰は何も云わない。どんな顔をしているのかも分からない。
「おい、だざ……」
「煩い!!!!!!!!!」
ビクッと肩が揺れる。此奴がこんな大声を出したのは初めてだった。恐る恐る太宰の顔を見た。
太宰は泣いていた。
「太宰……??」
「君に何が分かる…」
「は…?手前何云って……」
「君に何が分かる!!Aの…何が分かる!!!!」
突き飛ばされて前によろけると、振り返って太宰を見つめた。
大切なものを奪われたような子供のようだった。
158人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏菜子(プロフ) - 更新楽しみにしてます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (10月30日 21時) (レス) @page27 id: 7ba2b47e72 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ星(プロフ) - キャアアア!!!おめでとうございます🌸立原!よくやったな!!(笑) (9月21日 21時) (レス) @page4 id: a35decf8bd (このIDを非表示/違反報告)
萩野千紗 別垢 - 凄いです!!文才ありまくりです!!その文才を下され((結論・この作品大好きです!!更新楽しみにしています!! (9月19日 21時) (レス) @page2 id: 5c4afa8e2f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Mei | 作成日時:2023年9月18日 10時