46:『な』 ページ19
目が覚めると見知らぬ場所に居た。起き上がろうとすると、激しい痛みが身体を通り抜けて思わず蹲る。つられて情けない声をあげた。
「A、起きたかい」
「あ、ぅ……い…さん??」
声を出そうとすると、肺に息が入らない。無理やり吸おうとしても、冷気を吸っているように痛い。
「ゴホッ!!あ、ごめ………」
「!!A、喋らなくて良い。ゆっくり息をするんだ」
手を添えられながら云われた通りに息を吐く。
5分くらいそうしていただろうか。
不意に視界が明るくなった。
先程までぼんやりしていた太宰さんの顔がはっきりと見える。手を伸ばすと握ってくれた。
「ごめんなさい…」
「謝らなくて良い。其れよりも……どうしてこうなったんだい。森さんからは会合だったと聞いていたけど…」
「……異能を使った」
「ッ…無理したのかい」
首を横に振る。無理はしていない。任務や訓練で何時も使っていたくらいしか出していない。
でも其れすらも負荷になっていた。
「太宰さん…」
「A??」
手で顔を覆って云った。
「怖い」
「……A、大丈夫だ。まだ大丈夫だから」
太宰は思った。やっぱりAも死ぬと云う事に恐怖を感じるのだろう、と。少しだけ安心した。まだ生きる事に執着があるのだと。
でも違った。
「捨てられたらどうしたら良い?」
「ッ!!A」
顔を覆う彼女の手を取って其の儘握った。酷く冷たくて体温を感じない手だった。
「マフィアでしかもう生きられないのに」
「A。森さんはきっと…いや、絶対にAを手放さないと思うよ。分かるだろう?異能を使えないからと云うだけで、あの人がAを手放すはずが無い」
「そう…かな……」
と、Aの瞳からコンタクトが外れ落ちた。紫色の其れは地面に落ち、潰れていく。
「醜いね…何時見ても」
「…そんな事無い。Aの色じゃないか」
「太宰さんが云うならそうかもね」
その後は何も話さぬまま時間が過ぎた。
と、太宰がAの目を覆う。
「寝て良いよ、A」
「…でも」
「眠いのだろう?ほら、ちゃんと休まないと」
「ん……分かった」
おやすみ、と云うと直ぐに眠りにつくA。
タイミングを見計らったのか、森が部屋に入って来た。
「急に悪かったね」
「別にAの事なら構いませんよ」
顔を合わせず云い放つ。何も云わずに森は太宰の隣に立った。
「太宰君、少し話さないかい?」
「………別に良いですよ」
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夏菜子(プロフ) - 更新楽しみにしてます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (10月30日 21時) (レス) @page27 id: 7ba2b47e72 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ星(プロフ) - キャアアア!!!おめでとうございます🌸立原!よくやったな!!(笑) (9月21日 21時) (レス) @page4 id: a35decf8bd (このIDを非表示/違反報告)
萩野千紗 別垢 - 凄いです!!文才ありまくりです!!その文才を下され((結論・この作品大好きです!!更新楽しみにしています!! (9月19日 21時) (レス) @page2 id: 5c4afa8e2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mei | 作成日時:2023年9月18日 10時