44:『う』 ページ17
「ありが……ござい…ゴホッ!!」
「此方こそ。取り敢えず芥川さんは力ですね」
「元々貧弱な上…」
「云い訳は駄目ですよ」
5戦やって5回とも私が取った。流石に一気にやり過ぎたのか、疲れが半端じゃない。ポケットの薬を水で流し込んだ。
「体調は優れぬのですか」
「うん。下手したらもう来年は土の中…いや、海が良いかな」
広々とした世界を見てみたいから。
冷たい土の中なんて入りたくない。
「……立原が悲しみます」
「ふふ、知っているのですね」
「貴方達を見ていれば。立原も何処か上の空です」
樋口が煩いです、どうにかして下さいと嫌そうな顔をする芥川さんに笑みが漏れる。
と、芥川さんは呟いた。
「中也さんには云わないのですね」
「……そうするつもりです。幹部はきっと興味も無いでしょうから」
「そうでしょうか」
芥川さんの顔を見つめた。
「中也さんはきっと…「止めて、芥川さん」」
怖いから、その先を知りたくないから。
今だけは隠させて。
受け入れる時には必ず受け入れるから。
もう少しだけ幸せな儘で居させてよ。
「申し訳ありませぬ」
「気にしないでください。それでは」
部屋から出ると身体の力が抜けた。膝をついて呼吸を整えていると、蹲るようにしている私に影が出来る。
「Aさん……?」
「立原君…ごめん、少しだけ肩借りても良い??」
差し出された手を握って立ち上がるとまだ足はガタガタと震えている。其れに⎯⎯⎯⎯
『目』が見えない。
元々片方が見えないのに、健全であるはずの目も白く霧がかかっているようだった。其のせいでバランスが取りにくい。
顔を真っ青にする立原君に「大丈夫」と云うと震える足を前に出した。
ガクッ
「Aさんっ!!」
立原君は膝から落ちる私を支えてくれた。笑って「ありがとう」と云うつもりだったけれど、もう身体は云う事を聞いてくれない。
立原君の背中に身体を預けた。
「あ……た、はらく………」
「大丈夫です、誰も通らないような道で送ります。取り敢えず目、閉じて力抜いてください」
「ご、めん……ね」
「まぁ、Aさんの彼氏ですから」
私を気にしてゆっくりと歩いてくれる立原君の気遣いが嬉しかった。
其のテンポが揺りかごのように優しい。耐えきれなくてそっと目を閉じる。
其の儘眠りについた。
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夏菜子(プロフ) - 更新楽しみにしてます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (10月30日 21時) (レス) @page27 id: 7ba2b47e72 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ星(プロフ) - キャアアア!!!おめでとうございます🌸立原!よくやったな!!(笑) (9月21日 21時) (レス) @page4 id: a35decf8bd (このIDを非表示/違反報告)
萩野千紗 別垢 - 凄いです!!文才ありまくりです!!その文才を下され((結論・この作品大好きです!!更新楽しみにしています!! (9月19日 21時) (レス) @page2 id: 5c4afa8e2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mei | 作成日時:2023年9月18日 10時