41:『い』 ページ15
通された応接間は、相変わらず煌びやかな装飾が施されていた。何度も来た事が有るけれど、1人で来たのは初めてだ。何時も隣には誰かが居た。
もうマフィアには居ない太宰さん。
頼れる首領や紅葉の姐さん。
そして、兄さん。
暫く待っていると扉が開き、此処の組織の長が部屋に入って来た。立ち上がって頭を下げる。
「本日は宜しくお願い致します」
「此方こそ。さて、時間が勿体ない。早速始めましょう」
相手が席に座ったのを見て自分も腰掛ける。静かに息を吐くと相手の顔をじっと見つめた。
まだ若い彼は、去年長になったばかり。でも元々先代の補佐だったらしいから、ある程度の知識は勿論、組織の極秘情報まで知っている。
でも、此処の組織は長い事マフィアと結びついている。そう簡単には裏切らないと首領も云っていた。
「其れで御要望とは?」
なるべく温厚な雰囲気で、それでも威厳は保ちながら問う。今からはもう心理戦のようなものだから。
「実を云いますと、我々の最近の売上があまり伸びておらずですね。今までお約束していた4割を納める事が厳しくなりそうなのですよ」
「……成程」
差し出されたデータを見ても偽装では無かった。確かに、少しずつだが売上が減少している。
と、1つの項目に目がいった。
「あの…此処の組織とはどういったご関係で」
「去年投資を始めましてね。新しく結びついた組織でして…」
嗚呼、そういう事。
出された紅茶に口を付ける。甘い香りが広がって口の中に残っていった。
カチャリ、とカップを置く音がやけに大きく響いた。
「止めましょう」
「え……??」
「この組織に投資するのは危ない。近いうちに此処は潰れます」
最初の1年でこの組織は伸びるのか、それとも落魄れるのかは大体分かる。此処は明らかに後者。
「投資するのであれば此処は如何でしょう?つい最近うちも投資を始めたばかりなのですよ」
「嗚呼……確かに此方の方が良さそうだ」
「えぇ、他に分野を広げたければ……」
そう語り合っていると、何時の間にか時は過ぎていた。
「ありがとうございました」
「いえ、素晴らしい才能をお持ちですね」
恐縮です、と笑みを浮かべる。
だって私のこれは才能なんかじゃない。
首領から、太宰さんから学んだものだから。
彼らのように元々持っているものじゃない。
全ては兄さんに認めてもらう為に。
「それなら私は何だってする」
乾いた空に声が響いた。
158人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏菜子(プロフ) - 更新楽しみにしてます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (10月30日 21時) (レス) @page27 id: 7ba2b47e72 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ星(プロフ) - キャアアア!!!おめでとうございます🌸立原!よくやったな!!(笑) (9月21日 21時) (レス) @page4 id: a35decf8bd (このIDを非表示/違反報告)
萩野千紗 別垢 - 凄いです!!文才ありまくりです!!その文才を下され((結論・この作品大好きです!!更新楽しみにしています!! (9月19日 21時) (レス) @page2 id: 5c4afa8e2f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Mei | 作成日時:2023年9月18日 10時