居なくなってしまった貴方へ… (ページ22)

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賭けページ22

中庭は思ったより広く、花壇やアーチには色とりどりの花が咲いていた。

　図鑑では見たことがない花ばかりだったが、月明かりに照らされた姿は本当にきれいだった。

　ミスターに奥の方のベンチに行くように促され、私はベンチの端の方に座った。

　ミスターがパチンと指をならすと、何も無いところからティーセットが現れた。

　信じられない現象に目を丸くする。ミスターは私が驚いたのを見てまた笑った。

「カモミールティーです。寝る前に打ってつけですよ。」

　ミスターはそう言って勧めたが、まだミスターの事を信じてはいなかったので、勧めをやんわり断った。

「毒なんて淹れてないんですけどねぇ。まあ今回は諦めますよ。」
　

　そう言って再び指をならすと、一瞬のうちにティーセットはなくなってしまった。

「さて…本題に入りますが、あなたはスキャターを現世に連れて帰りたいんですよね？」

　私は勿論と、首を縦に振った。

「それでなんですが…ここは私、ミスターVと賭けをしませんか？あなたが我々の世界に墜ちるのが先か、スキャターを説得するのが先か。」

　怪しく微笑む表情には、何か企みがある気がきた。

「私はそれをして、何の得があるんですか？」

　疑惑の目でミスターを見る。賭けと言ったら何かを差し出さなければならない。
　信じられない人にそんなことをするなんてこっちに負担が大きすぎる。

「ありますよ…あなたのお姉さんの記憶を周りの皆さんに返してあげるとか…勿論、あなたにも完全な記憶もね…」

　記憶を返してもらえる…

　私はゴクリと生唾を飲んだ。

「私は何を賭ければいいんですか？」

「失敗したら、あなたはヴィランズになり、一生帰れなくなりますよ。」

そう言ってミスターは更に不気味に笑った。

「私の人生でも何でも賭けてやりますよ。」

　私がそう言うと、ミスターは満足そうに頷いた。