Episode95 ページ10
「はぁ……」
本日何回目のため息だろうか、授業中にも関わらず完全に思考は上の空。くるくるとシャーペンを回しながら、自分の不甲斐なさを嘆くばかりだ。
授業と授業の間の短い休み時間に話を切り出す気にはならなくて、何となくズルズルと引きずっていたらとうとう次は昼休みだ。みんなは分かるだろうか、今か今かと待ち望んでいる瞬間が実際に間近に近づいてきたときのなんとも言えない不安さは。
別に話すタイミングが無くなってしまうことへの不安ではなくて、事実その逆であるのだがかの山本は実際に上記の不安を胸に抱えていた。何が言いたいかって、彼は臆病なのである。
「……本、山本、」
「っえ、なに」
「何って、当てられてる」
前の席の友人が振り返って自身の名前を呼んでいることに気がつく。慌てて先生の方を見ると、大丈夫かー寝不足かーなんて言いながら山本のことを見つめていた。
「3行目んとこな」
「えと…すみません、何ページですか」
流石にページ数くらいは分かっていると思っていたのだろう、若い英語の先生は少し面食らったような顔をしたものの、直ぐに132ページだよ、全く…と告げたので急いでそのページまで教科書を捲り、該当箇所を探した。
「はい、正解。珍しいな、本当に寝不足か？体調管理には気を使えよ」
「はい…すみません」
こうした反応になるのは当然か、今までずっと成績優秀の真面目な生徒の代表例みたいなもんだったから。
こうした時に怒られずむしろ心配されるのも、日頃の行いのおかげだななんて。爆睡していたクラスメイトに先生が怒号を飛ばす声を聞いて、らしくもなくそんなことを考えた。
「じゃあ、乾」
「はい」
当てられた乾は、一瞬嫌そうな顔をしたものの直ぐに顔を作り直して、当てられた箇所をスラスラと答えて見せた。テスト期間そこ成績がやばいだのボヤいていた彼だったが、事実この高校のAクラスにいる訳であるし勉強は普通にめちゃ出来る。基準がおかしいだけなのだ、基準が。
少しプリンになってきた金髪頭の彼をぼーっとそのまま見つめていると、遠くからの視線に気が付いたのだろうか彼が目を合わせてきて
『大丈夫っすか？』
なんて口パクで呟くものだから、こくんと頷いて見せると満足したのか、またそのまま気だるげな顔を前へ向けたのだった。
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あたま - 初コメ失礼します。1から一気に読んでしまいました！続きがめっちゃ気になります！ (2021年10月12日 5時) (
レス) id: be4260c156 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - 里野こちさん» コメントありがとうございます！嬉しいです！了解です！ (2021年2月5日 12時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
里野こち - 初コメ失礼します。いつも楽しく読ませてもらってます！新しい登場人物なのですが、ymgmさんとhysさんがいいです！できればでいいのでどうかよろしくお願いします！ (2021年2月3日 18時) (レス) id: aa6e439f65 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - なつめさん» ありがとうございます…！！最近、たまってたなつめさんの小説を一気読みしました！至福でした……笑笑 (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - ピカイアさん» ありがとうございます…！手術の先輩(こんなこと言っていいのか…？笑)のお言葉、きちんと受け取らせて頂きます…。体調、自分で感じてるのが100%じゃないですもんね…！ (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Syuri | 作成日時：2020年7月30日 23時
