Episode111 ページ28
こうちゃんは絶句し、そのままどこを見ればいいか分からないま俯いた。それはそうだろう。自分の好きだった人が、自分の親友を貶めようとしていたなんて、悲劇もいいところだ。
「その…佐々木さんは、なんて」
「本人もやったって認めてるよ。まあ、言い訳できないものが出てきちゃってるわけだし…。詳しいことはまだ聞いてなくて、後日きちんと話す約束を取り付けてるから、心配しないで」
「…ありがとうございます」
優しく微笑む福良を見て、こうちゃんも心の乱れが納まった心地がする。今まで自分のことばかりに焦点を置いてしまっていたが、冷静に考えると恋愛にうつつを抜かす自分を傷つけまいと、先輩はここまでこうして動いてくれていたんだろう。そう思うと、こうちゃんはなんとも不甲斐ない思いでまた胸がいっぱいになった。
「…申し訳ないけど、手加減はしないから」
「伊沢」
そう言って立ち上がった伊沢は、相変わらず不機嫌そうな顔を崩してはいなかった。何も言えずにいるこうちゃんに、どこを見ているか分からない様子のまま言葉を続ける。
「こうちゃんが特別な感情を抱いていたとしても、俺は許す気は無いし」
「…伊沢」
「河村さんを、仲間を殺されかけてるんだから、」
「伊沢、ねえ」
「それなりに然るべき制裁ってやつを…」
「伊沢さん！！！」
川上が、声を張り上げて立ち上がる。
これには伊沢に口を刺していた福良も驚いたようで、部屋の空気が一気に凍りつく。
「こうちゃんに今それを言ったとて、どうしようもないでしょう。分かってますよ、それくらい。何をそんなに苛立ってるか知りませんけど、感情的になりすぎです。少し頭、冷やしてきてください」
ピシャリとそう言われた伊沢は一瞬瞳を揺らがせたものの、そのまま早足で生徒会室を出ていってしまった。束の間の沈黙という気まずい時間が流れる中、川上はふう、と息を吐き福良やこうちゃんたちの方に向き合った。
「すいません、伊沢さんの調子があんなんで」
「いや、川上が謝ることじゃないけど…やけにピリピリしてるね」
「別にこうちゃんや誰かを攻めようってんじゃないんですよ。もっと早くに気づけてたら、ここまで大事にならなかったんじゃないかって伊沢さんなりに責任感じちゃってるみたいで。そっとしておいてあげてください」
「…そんなの連帯責任だろ。俺も嗅覚で何とかなったのかもしんねーし」
須貝がそう呟く。伊沢の出ていった扉を見つめながら。
続く (更新停止中)
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あたま - 初コメ失礼します。1から一気に読んでしまいました！続きがめっちゃ気になります！ (2021年10月12日 5時) (
レス) id: be4260c156 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - 里野こちさん» コメントありがとうございます！嬉しいです！了解です！ (2021年2月5日 12時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
里野こち - 初コメ失礼します。いつも楽しく読ませてもらってます！新しい登場人物なのですが、ymgmさんとhysさんがいいです！できればでいいのでどうかよろしくお願いします！ (2021年2月3日 18時) (レス) id: aa6e439f65 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - なつめさん» ありがとうございます…！！最近、たまってたなつめさんの小説を一気読みしました！至福でした……笑笑 (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - ピカイアさん» ありがとうございます…！手術の先輩(こんなこと言っていいのか…？笑)のお言葉、きちんと受け取らせて頂きます…。体調、自分で感じてるのが100%じゃないですもんね…！ (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Syuri | 作成日時：2020年7月30日 23時
