Episode110 ページ27
突然、伊沢に突き放すようにそう言われたこうちゃんはそのまま何も言えずに固まってしまった。
言うだけ言って、そのまま放り投げた伊沢にしびれを切らしたのは、同じく状況が呑み込めていない須貝だった。伊沢とは長く付き合ってきたことも相まってか、明らかに不機嫌な態度の伊沢にも臆せずに言葉を投げかける。
「おい、ちゃんと説明責任果たせって。てか、なに。俺とこうちゃん以外の皆はわかってるわけ？」
「…分かってるよ」
伊沢、ほら、駄々っ子じゃないんだから、と、ため息を吐いた福良が伊沢に詰め寄った。それでもなおぶすっとして態度を崩さない伊沢に、福良は諦めたようにパンっと一回手を叩いた。
「…例の毒の件で、分かったことがあったんだよ。それを、須貝さんとこうちゃんと山本以外には伝えてて、三人には伝えてなかったんだ」
ゆっくりと椅子に座りながら、福良が優しい口調でそう話し始める。伊沢が脅すようなこと言ってごめん、と大人な対応をしてみせる福良を、こうちゃんはブンブンと首を振って見つめた。
「分かったことって…毒の、成分…とかですか、なんの毒を使った、とか、」
「いいや、分かったの。犯人が」
「はっ、」
情報の飛躍に、思わずこうちゃんは言葉が詰まった。
後ろで、須貝が同じように小さく息を飲む音が聞こえる。
「は、んにんが分かったって…一体誰が……まさか」
「ごめんねこうちゃん、そのまさかだよ」
「…うそだろ」
伊沢の言葉を反芻して、たどり着いてしまった答えに絶句する。誰も、自分が恋をしていた相手が、自分の仲間を殺そうとしていただなんて夢にも思わないだろう。言葉が出ないこうちゃんに代わって、須貝がその先を続ける。
「それは、なんで分かったの」
「…もともと怪しいと思ってたんだよ。事件の後、この部屋を調べたとき、給湯室の床から同じ粉末が採取された。給湯室に入ってたのは俺の覚えてるとこ山本と佐々木さんだけだった」
「…あとは、元々様子が少しおかしかった。みんな知ってると思うけど、俺はセンチネルで、眼が良いから。そーゆー表情の変化とかはよくわかんの。まあ、佐々木の場合は露骨だったけどな。そんで、鞄の中調べさせてみたらまあこれだ。山本の可能性も一応疑ったけど、山本が犯人ならわざわざ自分で薬の入った袋を出すわけないだろ」
伊沢がここまで言い切り、山本の鞄にあった袋をつまんでみせる。
「これが、佐々木の鞄にも入ってた。仕立てあげられたんだな」
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あたま - 初コメ失礼します。1から一気に読んでしまいました！続きがめっちゃ気になります！ (2021年10月12日 5時) (
レス) id: be4260c156 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - 里野こちさん» コメントありがとうございます！嬉しいです！了解です！ (2021年2月5日 12時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
里野こち - 初コメ失礼します。いつも楽しく読ませてもらってます！新しい登場人物なのですが、ymgmさんとhysさんがいいです！できればでいいのでどうかよろしくお願いします！ (2021年2月3日 18時) (レス) id: aa6e439f65 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - なつめさん» ありがとうございます…！！最近、たまってたなつめさんの小説を一気読みしました！至福でした……笑笑 (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - ピカイアさん» ありがとうございます…！手術の先輩(こんなこと言っていいのか…？笑)のお言葉、きちんと受け取らせて頂きます…。体調、自分で感じてるのが100%じゃないですもんね…！ (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Syuri | 作成日時：2020年7月30日 23時
