Episode109 ページ25
「それで、手紙を開けようとしてたら、須貝さんたちが」
「そ…れはまた」
「恋って、本当に人を盲目にさせるんだね」
川上は苦笑い。河村は、どこにそこまで面白いことがあったのか、ニヤニヤと笑いながら感心したように呟いていた。
みんなの注目を浴びながら話し終えたこうちゃんはやはり居た堪れない思いが強く、むしろ沈黙が訪れなかっただけマシだと思って拳を握り締めた。
伊沢がわざとらしく声に出して息を吐き、それ、山本には？と呆れたように尋ねる。
「…全部、話しました。もちろん謝罪も。そこんところは、なのでもう大丈夫です」
「ならよし。まあ、今回のは100ゼロでこうちゃんが悪いっしょ。もうちょい理性で自分をコントロール出来るようにね」
「はい…」
カラッとした顔でスバっと叱責を食らったこうちゃんではあるものの、もう既に腹を括っているこうちゃんは真面目な顔で返事を返した。
須貝も、オーケー、理解したわと口元を弛めて、軽くこうちゃんの頭の上に手を乗せる。
「まあ、ラブレターじゃなくてよかったな」
「いや、なんかもう…そんな素直に喜べないですって」
いつものように冗談めかしくそう言って笑う須貝に、返すこうちゃんもいつものように笑っていた。その目元が若干弛んでいるのは、山本を思ってのことなのか、はたまた肩の荷がおりた安心感からなのか。
なにはともあれ、取り敢えず二人の誤解が解けてよかった。福良も二人を見て一呼吸おいた後、伊沢に話を振ろうと振り返るよりも先に、話の流れを急展開させる言葉を吐いたのは伊沢自身だった。
「…喜ばない方が、まあ良かったんじゃないの」
部屋の空気が固まる。まだ笑みが顔に張り付いているこうちゃんは、伊沢の言葉がよく理解出来ないまま、え、と呟いていた。
伊沢は、手元のボールペンを器用に回しながら、こうちゃんや須貝の方ではなく下、ら辺を見つめていた。
「そ、れは、どういう」
「…ん？そのままの意味」
そのままの意味って、どういうことですか。
聞くに聞けずにいるこうちゃんがちらりと助けを求めるように周りを見ると、皆どこか気まずそうに神妙な顔をするだけで、なんだか、違う意味で泣きたくなってくる。
「…伊沢、」
「…だから、早く目を覚ませってことだよ」
福良に声をかけられた伊沢の目は全く笑っておらず、ただただ刺すような冷たい視線がそこにはあるだけだった。
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あたま - 初コメ失礼します。1から一気に読んでしまいました！続きがめっちゃ気になります！ (2021年10月12日 5時) (
レス) id: be4260c156 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - 里野こちさん» コメントありがとうございます！嬉しいです！了解です！ (2021年2月5日 12時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
里野こち - 初コメ失礼します。いつも楽しく読ませてもらってます！新しい登場人物なのですが、ymgmさんとhysさんがいいです！できればでいいのでどうかよろしくお願いします！ (2021年2月3日 18時) (レス) id: aa6e439f65 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - なつめさん» ありがとうございます…！！最近、たまってたなつめさんの小説を一気読みしました！至福でした……笑笑 (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - ピカイアさん» ありがとうございます…！手術の先輩(こんなこと言っていいのか…？笑)のお言葉、きちんと受け取らせて頂きます…。体調、自分で感じてるのが100%じゃないですもんね…！ (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Syuri | 作成日時：2020年7月30日 23時
