Episode104 ページ19
「…よかったねこうちゃん、とりあえず失恋じゃない」
「…本当にすいません、」
カリカリと、紙にくっついたテープを爪で剥がしながら山本がこうちゃんに問えば、こうちゃんは複雑な表情をしながら手で顔を押えていた。
もっと安堵してもいいのに。山本はそう思ったが、自らの行動を心の中で反芻しているこうちゃんを見てその言葉は飲み込む事にした。
「…てか、開かない」
ぴしりと紙にくっついたテープの、なんと剥がしにくいこと。山本が立ったままひたすらに格闘していると、こうちゃんがこっちで座ってやりましょう、と山本の鞄を持ち上げた。
人通りが多くなってきた。二年生のクラスのホームルームが、一斉に終わったのだろうか。
「もうちぎっちゃったらどうですか？」
剥がれる様子のない封筒を見ながら、こうちゃんが呆れたように呟く。仮にも好きな人が用意したであろう物を破るだなんて、一体どうなんだと山本は思ったが、確かにこのままでは埒が明かない。
封筒の端をつまみ、潔く破ろうとしたその時、見知った声がこちらを呼ぶ声が聞こえてきた。
「おーい山本ー」
「こうちゃんも、何してるの」
くしくも手を振りながら近ずいてきたのは以前気まずい現場を見られてしまった須貝と福良。
須貝は二人を確認すると少し複雑そうな表情をしていたが、特に気に止めることも無く山本は封筒が開かなくて…と困った顔をして見せた。
それを聞いた福良は軽く目を見開いて、こうちゃんにそっとこの封筒って…と尋ねる。こうちゃんが目だけではい、と返していると、須貝がその封をひょいと受け取った。
「うーん…こりゃハサミかなんかで開けた方がよくないか？」
俺今ハサミ持ってるから、と鞄を開け筆箱からコンパクトサイズのハサミを取り出す。
山本がありがとうございます、とそれを受け取ろうとするよりも早く、須貝はそのハサミで封を開いていく。
「…？なんだ、これ」
チョキン、と切られ終えた封筒の中から出てきたのは、小分けされたビニールの中に入っている謎の白い粉で。
「え、」
パッと見、やばい粉に見えなくもないそれに、思わず全員固唾を飲んで言葉を失った。山本も、驚きと困惑の混ざった目でその中身を見つめている。
なんなんでしょう、これ…と言おうとした山本は、ふとこの封筒が誰のどうした物なのかを須貝と福良が知らないことに気づく。
あの、と言葉を紡ごうとしたのも束の間。
なんと、須貝がこうちゃんに掴みかかっていた。
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あたま - 初コメ失礼します。1から一気に読んでしまいました！続きがめっちゃ気になります！ (2021年10月12日 5時) (
レス) id: be4260c156 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - 里野こちさん» コメントありがとうございます！嬉しいです！了解です！ (2021年2月5日 12時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
里野こち - 初コメ失礼します。いつも楽しく読ませてもらってます！新しい登場人物なのですが、ymgmさんとhysさんがいいです！できればでいいのでどうかよろしくお願いします！ (2021年2月3日 18時) (レス) id: aa6e439f65 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - なつめさん» ありがとうございます…！！最近、たまってたなつめさんの小説を一気読みしました！至福でした……笑笑 (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - ピカイアさん» ありがとうございます…！手術の先輩(こんなこと言っていいのか…？笑)のお言葉、きちんと受け取らせて頂きます…。体調、自分で感じてるのが100%じゃないですもんね…！ (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Syuri | 作成日時：2020年7月30日 23時
