Episode100 ページ15
福良に続くように一歩、電車に足を踏み入れる。
そのまま後ろを振り返る勇気も度胸もなく俯いていると、福良のあっ、という声と共に自分の後ろでドアがしまった。
そして無情にも、二人を置いて電車は発車する。
こうちゃんが山本が乗ってこなかったことに心の奥底では安堵する傍ら、福良はスマホを取り出して、須貝さん…ちょっともう…と小さく不満を独りごちていた。福良の方面はこちらとは逆方向だ。おそらく、須貝と何か約束でもしていたのだろう。自分たちの勝手な都合のせいで、その計画諸共おじゃんにしてしまった。
「福良さん、あの…」
「で？ 一体何があったの？」
すいません、と口に出そうとした矢先に、若干呆れたような口調で福良が切り出した。
直球な聞き方でまじまじと見つめられ、思わず閉口する。だが、ここまで迷惑をかけておいて言いたくないです、は通用しない。こうちゃんが切り出すのを待っていてくれている福良を横目に少し口ごもった後、こうちゃんは素直に口を開いた。
「俺が、悪くて」
「なんで？」
「俺、佐々木さんのことがその…す…好き、なんですけど」
「うん」
勉強途中で佐々木さんが山本さんの鞄に恋文を入れるところを見ちゃって。それで思わず教室飛び出しちゃって。駅で山本さんに色々心配されたんですけど、なんだか、その山本さんに無性に腹が立っちゃって。分かってるんですよ、山本さんはなんにも悪くないって。ただの俺の醜い嫉妬心なんです。分かってたのに、抑えられなかった。
福良は、こうちゃんの話を淡々と、受け止めるように聞いては、時々相槌を打った。
一度口を開いてしまったが最後、こうちゃんは自分の胸の内に秘めていた感情を、絞り出すように吐露していく。
クイズの上達が速い山本に、憧れ共に嫉妬していた。
勉学でも敵わない山本に、劣等感を抱いていた。
自分がもっと努力すればいいだけの話なのに、どうしてもそういった感情を抱いてしまう自分に嫌気がさす。
判官贔屓のような考え方になってしまうが、自分よりも劣悪な環境で必死に頑張ってる山本に嫉妬している自分が、醜くて、辛くて、嫌いだ。
最後の方は、泣きそうになりながら、吐き出すように全てを語った。福良は真っ直ぐに自分を見つめ、ただただこうちゃんの話を聞いていた。
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あたま - 初コメ失礼します。1から一気に読んでしまいました！続きがめっちゃ気になります！ (2021年10月12日 5時) (
レス) id: be4260c156 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - 里野こちさん» コメントありがとうございます！嬉しいです！了解です！ (2021年2月5日 12時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
里野こち - 初コメ失礼します。いつも楽しく読ませてもらってます！新しい登場人物なのですが、ymgmさんとhysさんがいいです！できればでいいのでどうかよろしくお願いします！ (2021年2月3日 18時) (レス) id: aa6e439f65 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - なつめさん» ありがとうございます…！！最近、たまってたなつめさんの小説を一気読みしました！至福でした……笑笑 (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - ピカイアさん» ありがとうございます…！手術の先輩(こんなこと言っていいのか…？笑)のお言葉、きちんと受け取らせて頂きます…。体調、自分で感じてるのが100%じゃないですもんね…！ (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Syuri | 作成日時：2020年7月30日 23時
