Episode99 ページ14
「山本さん、すいません、あの、本当に突然呼び出されて…」
「わかったって、大丈夫」
全ての授業が終わり、色んなクラスの生徒が入り交じる放課後。山本とこうちゃんは、生徒会室に向かって歩いていた。
結論から言うと、昼休み中にこうちゃんが間に合って帰ってくることはなく、結局満足に話せずじまいで終わってしまったのだ。
こうちゃんは申し訳なく思っているのか、先程から何度も山本を待たせた挙句間に合わなかったことを謝っていた。
山本としては、そのポイントをそんなに謝られるよりももっと先に話すべき大事なことがあるだろ、といった感じなのだが、なんせこうも必死に謝られてしまっては的外れだが何だかすこぶるどうでもいいような気がしてくる。
いや、勿論どうでもよくなんてことはないのだが。
ついついああ、いつものこうちゃんだといった安心感のようなものが生まれてきてしまうのだ。
「…んで、こうちゃん。この前の話、したい」
このままでは生徒会室についてしまう。
また曖昧なまま、持ち越されるのはごめんだと足を止めてこうちゃんに問えば、こうちゃんは一瞬言葉を詰まらせてからそうですね、と同じように立ち止まった。
「なんで先に帰っちゃったのか聞きたいし、あと、僕には分からないって言ってたのも」
もし僕が何かしてしまっていたのなら謝りたい。
そう告げれば、こうちゃんはしばらく目を伏せ口をつぐみ、そしてゆっくりと言葉を紡いだ。
「…謝らなきゃいけないのは俺なんです。山本さんは、本当に、何も悪くないんです」
こうちゃんは、カバンを持ちながらその拳をぎゅっと握りしめた。
言おう、言おうと思っていたことでも、いざ口に出すとその内容が全部自分に刺さって、罪悪感や自分の愚行に向き合わされ、泣きたいような気持ちになるのだ。
そんなこうちゃんの気持ちを汲み取ったのかそうでないのか、山本はじっと黙ってこうちゃんの言葉を待っている。
山本の良いところ、優れているところを見れば見るほど、自分と比較して下卑し、その矛先があらぬ方向に向いてしまう。
そしてそんな自分を自覚してしまえばしてしまうほど、それがまた下卑に繋がって始まるのは負の無限ループ。
こんなドロドロとした醜い感情だが、それによって山本を傷つけるのは本望ではなくて。
包み隠さず、全部話そうと、福良さんに電車で話を聞いてもらったときからずっと思っていた。
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あたま - 初コメ失礼します。1から一気に読んでしまいました！続きがめっちゃ気になります！ (2021年10月12日 5時) (
レス) id: be4260c156 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - 里野こちさん» コメントありがとうございます！嬉しいです！了解です！ (2021年2月5日 12時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
里野こち - 初コメ失礼します。いつも楽しく読ませてもらってます！新しい登場人物なのですが、ymgmさんとhysさんがいいです！できればでいいのでどうかよろしくお願いします！ (2021年2月3日 18時) (レス) id: aa6e439f65 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - なつめさん» ありがとうございます…！！最近、たまってたなつめさんの小説を一気読みしました！至福でした……笑笑 (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - ピカイアさん» ありがとうございます…！手術の先輩(こんなこと言っていいのか…？笑)のお言葉、きちんと受け取らせて頂きます…。体調、自分で感じてるのが100%じゃないですもんね…！ (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Syuri | 作成日時：2020年7月30日 23時
