Episode96 ページ11
こうちゃん、お昼食べよう。
いつもなら当たり前のように言っているこの一言を口から出すのに、これ程まで苦労したことがあるだろうか。
喧嘩ってこういうもんなのか、今までそれらしい喧嘩を男友達としてこなかった山本には初めての状況だった。
「ねえこうちゃん」
勇気をだして後ろを振り向くと、こうちゃんも同じような事を考えていたのだろうか、特に何をするでもなくお弁当だけ机の上に出してモジモジとしているこうちゃんが目に入る。
「…お昼、食べよ」
「…そうですね」
乾はというと、反対側の方の席で他のクラスメイトと昼食を取ろうとしていた。最近は山本とこうちゃんが度々生徒会の仕事で昼に抜けることがあったので、そんな時は他のグループに混ざってお弁当なりを食べているようだ。
本日はというと、いつもなら一緒に食べるのだが察しがいいのか律儀にLINEで今日は俺お邪魔っぽいんで二人でどうぞと報告をしてきた。
そんなに仲がぎこちないように周りから見えていたのかと考えるとゾッとするが、今回ばかりはその観察眼に感謝するしか無かった。
「…あのさ、昨日の事なんだけど…」
「…てか、山本さん、飯は」
「え」
早速話を切り出そうとしたとこで、自分のお弁当箱に手をかけているこうちゃんの遮りが入る。
そうだ、忘れていた。
昨夜は崩れ落ちるように眠り、翌日のことなんか全く考えずに昼食を用意するのも買うのもすっかりと忘れていた。
思わず忘れた…と山本が呟くと、こうちゃんはそれは…購買かどっかで買ってきた方がいいですよと控えめに言われてしまう。
いつもなら、何やってんですか、とか言って笑い飛ばしてくれるのに、この下手に冷たいような他人行儀のような雰囲気がなんとも心地悪かった。
「…ちょっと、買ってくるわ。」
すぐに鞄から財布を取り出して、教室を後にする。
廊下に出た途端に、何となく今まで張っていた気が緩んだような気がして、あぁ…と口から声が漏れた。
今までこうちゃんの隣は落ち着いて気を休めることが出来るような所だったのに、それがまるで嘘のようだ。
そう色々と考え始めると、何で僕だけがこんなに頑張ってアクションを起こさなきゃいけないんだ、とか、そもそも僕は何を謝ればいいんだ、とかストレスからくる怒りのようなものがムクムクと湧いてくる。
駄目だ、目的を見失っちゃ、と首を振って、購買までの道を歩く。
「あ、山本」
すると突然、後ろから声をかけられた。
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あたま - 初コメ失礼します。1から一気に読んでしまいました！続きがめっちゃ気になります！ (2021年10月12日 5時) (
レス) id: be4260c156 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - 里野こちさん» コメントありがとうございます！嬉しいです！了解です！ (2021年2月5日 12時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
里野こち - 初コメ失礼します。いつも楽しく読ませてもらってます！新しい登場人物なのですが、ymgmさんとhysさんがいいです！できればでいいのでどうかよろしくお願いします！ (2021年2月3日 18時) (レス) id: aa6e439f65 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - なつめさん» ありがとうございます…！！最近、たまってたなつめさんの小説を一気読みしました！至福でした……笑笑 (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - ピカイアさん» ありがとうございます…！手術の先輩(こんなこと言っていいのか…？笑)のお言葉、きちんと受け取らせて頂きます…。体調、自分で感じてるのが100%じゃないですもんね…！ (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Syuri | 作成日時：2020年7月30日 23時
