Episode87 ページ2
山本さんがお手洗いに立ち、教室にはこうちゃんと佐々木の2人だけが残された。
思わぬ状況に、こうちゃんはずっとドキマギしっぱなしである。果たしてラッキーなのか、アンラッキーなのか。
「佐々木さんは、得意教科とか、あるの？」
「うーん…強いて言うなら、国語かなぁ…」
「そうなんだ」
会話終了。極度に緊張しているせいか、いつもならくだらない話題でどこまでもつなぎ止められる会話もろくに続かず、微妙な沈黙が毎回訪れてしまう。
おい、どうした渡辺航平。いつもはこんなんじゃないだろ。もっとスムーズに会話を繋げて、冷静クールな男であるところを見せなければ。
しかしそう思う頭とは裏腹に、体温は上昇し焦り具合もどんどん増していく。
お手洗いに立った山本は、なかなか戻ってこなかった。
きっと俺の事を気遣って、少し長めの間佐々木さんと二人っきりにしてくれようとしているんだ。そもそもこの勉強会に誘ってくれたのも、気を聞かしてくれた山本さんだったし。
ただそんな山本の気配りは幸をそうさず、こうちゃんはなるべく早く山本に戻ってきて欲しかった。
こんな調子で佐々木さんに変なやつだと思われるくらいだったら、山本さんが仲を取り持ってくれてる状態の方がマシだ。
短い会話の話題もとうとう底をつき、こうちゃんは遂に勉強を再開するためにペンを走らせ始めてしまった。自分の不甲斐なさにため息が出る。惨めだ。くそ。
それでもどうしても彼女のことが気になってしまい、ろくに覚えていない物理の公式を模写しながらちら、と彼女の方を伺った。
「…？」
自分と同じくペンを走らせていると思っていた彼女は、なにやらカバンの中をゴソゴソと漁っている最中だった。
何をしているのだろうか。その手の先に目を向ける。
「………っ」
佐々木の手の先にあったのは、山本の鞄だった。なにやら折りたたんだ紙のような、白い物を鞄の中に入れている最中だった。
ラブレター、だろうか。
確かに、そもそもこの勉強会を山本さんに持ちかけたのは佐々木さんだったし。生徒会室でも、何やら楽しそうに2人で雑談していたし。
佐々木さんが山本さんに好意を寄せているのは、どう考えても自明だったでは無いか。今更何驚いてるんだ、俺。
そうだ、そりゃそうだと頭の中で、言い訳を反芻するも、気持ちがついて行かないのが現実で。
ガラ、と戻ってきた山本さんとすれ違うように、こうちゃんは勢いよく教室を飛び出していた。
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あたま - 初コメ失礼します。1から一気に読んでしまいました！続きがめっちゃ気になります！ (2021年10月12日 5時) (
レス) id: be4260c156 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - 里野こちさん» コメントありがとうございます！嬉しいです！了解です！ (2021年2月5日 12時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
里野こち - 初コメ失礼します。いつも楽しく読ませてもらってます！新しい登場人物なのですが、ymgmさんとhysさんがいいです！できればでいいのでどうかよろしくお願いします！ (2021年2月3日 18時) (レス) id: aa6e439f65 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - なつめさん» ありがとうございます…！！最近、たまってたなつめさんの小説を一気読みしました！至福でした……笑笑 (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - ピカイアさん» ありがとうございます…！手術の先輩(こんなこと言っていいのか…？笑)のお言葉、きちんと受け取らせて頂きます…。体調、自分で感じてるのが100%じゃないですもんね…！ (2020年11月11日 0時) (レス) id: 05aa016733 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Syuri | 作成日時：2020年7月30日 23時
