QK高校生徒会執行部 2

Episode70 ページ35

「…いやいや、もう、本当にそういう冗談はいいから」


俺ら勉強で疲れてんだよ、あんたの冗談にいちいちツッコミを入れてる気力なんてないのと言わんばかりに、須貝はあからさまにため息を吐いて荷物をまとめ始めた。


「いや、冗談じゃないんだけど」


逆に何言ってんのお前らみたいな顔をしてくる伊沢に、いやいやこっちの表情だとツッコミを入れたくなる。


「急すぎるでしょ、流石に。俺たちなんも持ってないよだって」


「俺ん家にはなんでもあるぜ」


「下着とか、歯ブラシとかいろいろどうすんのよ」


「そんなんどこにでも売ってるだろ、コンビニとか。用意させてもいいし」


どんな反論を言っても全て金の力で跳ね返してくる伊沢。二年の端に隠れてちょっとだけ楽しそうな顔をしているこうちゃんを除いて、みんな流石にそれは…というような表情をする。


「…あの、でも俺家族に何も言ってないんでいきなりはちょっと…。夕飯とか作ってもらってたら申し訳ないし」


微妙な顔をして成り行きを見守っていた川上が、ここでやっとおずおずと意見をあげた。これに対しては伊沢もぐうの音が出ないようで、それは、確かに…と若干不貞腐れた顔をしてうねり声を上げた。


「…じゃあ、川上は電話して家族に確認してもらって」


「あ、何俺らはもう泊まり決定してんの？」


「山本とか一人暮らしじゃん。許可も何も無いよな。よもやテスト前の日曜日に他の予定なんて入れているわけないし」


「そ、それはそうですけど」


「こうちゃんは？どう？」


「俺ちょっとお泊まりしたいです！」


「よしきた！うぇーい」


目を輝かせて喜ぶこうちゃんに、はいこれでもうお泊まり決定〜！と楽しそうに更にはしゃぎ出す伊沢。
こうなると、もう止められないのは何となく勘で分かっている。


「…んもー、じゃあ俺も家に電話するからちょっとまってて」


「まあ俺は一人暮らしだし、別にいいけど…」


「あの…家族に確認の電話入れたらOK出ちゃったんですけど…」


次々と二年生が折れていく様は、見ていてなかなかに異様な光景だった。今回は山本の誕生日パーティーの時の程納得度は高くはいけれど。


「河村は？平気だった？」


「まあ俺も一人暮らしだから…」


「そうだったっけ。よし！じゃあ飯食べるかー！」


この伊沢の家のご飯を食べるために泊まりを決めたのは一体何人だろうか。良くも悪くも、みんなはそれぞれ顔を見合わせて苦笑いした後、伊沢の後に続いたのだった。

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