先輩と殺し屋さん【橙】

. ページ22

.





ジ「でな！俺の育ててるサボテンがな！」





彼は楽しそうに
私に観葉植物のことを話してくる。

大事に育ててるんだって。


こんないきいきした彼の表情は初めて見る。




普通だったら、大好きな先輩と2人きりで
先輩のお話を聞けて嬉しかったりするんだろうけど…

私の場合、そうもいかないわけで。





こんなに笑顔で楽しそうに話してくれるのに
明日の貴方は、動かなくなっちゃうんでしょ。

恐怖に脅えた顔で動かなくなっちゃうんでしょ。


私、分かってるんだから。




何度も何度も、
死んだ人の顔見てきたから。






ジ「Aちゃん、大丈夫か？」

『は…あぁ、大丈夫ですよ』

ジ「最近ぼーっとしとるらしいな？
なんかあったんなら言うてみ？」

『先輩は……優しいです』

ジ「え！？優しないよ〜…」






優しいよ、貴方は。



これ以上にないくらい優しくて、
これから死んでしまうには、勿体ない人材だ。




こんなことになるなら、
この仕事、引き受けなければ良かった。

彼と出会わなければ良かった。





殺し屋なんかじゃなくて、
普通の女の子として貴方と出会いたかった。





なんて言ったら、ただの我儘だよね。







『先輩』

ジ「ん？どしたー？」

『明日の放課後、先輩の教室で待っててください』

ジ「え、ええけど…」

『伝えたいことがあります』

















先輩、


出会ってくれてありがとう。






.

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す